研究課題/領域番号 |
17K03491
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹浜 修 立命館大学, 法学部, 教授 (40188214)
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研究分担者 |
山下 典孝 青山学院大学, 法学部, 教授 (00278087)
土岐 孝宏 中京大学, 法学部, 教授 (70434561)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 主観的危険 / 被保険者の自殺 / 生命保険 / 証明責任 / 保険事故招致 / 故意 / 保険者免責 / 自由な意思決定 |
研究実績の概要 |
当年度は、生命保険契約における自殺免責の法理を中心にして、検討を深めた。ドイツ法およびフランス法の研究を加え、わが国の解釈、立法論をも視野に入れる検討を行い、一定の成果を得ている。一つの見解は、外国法制を参考にして、被保険者の自殺における「故意」の中身を死の結果を認識しつつ死亡することと、自由な意思決定があるとはいえないが、死の結果を認識しつつ自殺行動に出て死亡することに分けて、後者は保険者有責とする解釈の可能性を示した。しかし、なお、共同研究の中でも見解は分かれる部分があり、精神医学の見地からの検討を加えても、限定された自殺免責期間の設定により法的関係を安定化させた工夫を否定するだけの科学的区分が可能であるのかについてなお疑問があるという状況がある。参考にされたドイツ法でも、この点についての議論は、精神医学の成果を必ずしも法律論に直ちに反映する対応は採られていない。このため、この部分は、法的に明確な対応をするためには、自殺行動に移る人の精神状態について、どこまでが合理的な意思の活動として捉えるべきかは、精神医学の今後の発展に依存する要素が残っている。 一方、自動運転の自動車など、AIを活用した情報通信科学・技術の発展に伴う人の主観的危険に対応する保険契約に関する研究については、かなりのスピードで状況が変化しており、外国の対応ならびにわが国の政府の対応を含めて研究を進めようとしているが、本研究チームでは、なお検討を取りまとめる段階に至っていない。時期的に一定の区切りをつける必要を感じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人に関する保険である生命保険契約に関する主観的危険の代表例である被保険者の自殺については、昨年度および当年度において、とくにドイツ保険契約法との比較においてわが国の研究水準を前進させる成果を得られ、客観的に日本法とドイツ法との比較研究ができる条件を整えることができた。この面で、本研究課題は、大変順調に進展したと評価している。加えて、当年度では、フランス保険法との比較も加えて、一部には、一つの提言としての見解も出すことができた。ただ、これは、なお議論のあるところであり、関係諸科学、とくに精神科学の発展に依存する部分が大きい。 他方、コンピューター情報科学・技術の利用に伴う主観的危険の変容がいかなることになるのか、保険制度、保険契約においてそれをどのように受け入れるのかという面の研究は、本研究チームでは、現状の変化のスピードに対応する検討が遅れている。この点をキャッチアップする必要がある。 したがって、全体としては概ね順調に研究は進行しているが、やや遅れている部分があるため、これに対応することが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
主観的危険に関する保険者免責につき実態に即した対応を法的に行うためには、裁判においての立証の問題も含めて考察する必要がある。そこで、その主張立証方法および保険給付を請求する側と保険者側との対応関係のルールを検討する。このような面を考察対象にすることによって人の精神疾患などの精神活動の変調に関わる研究部分のまとめを行う。 一方、コンピューター情報科学・技術の利用に伴う主観的危険の変容に関する研究については、本年度の一定の時期に区切りを設けて、その時点までで想定できることを対象にして研究の取りまとめに向かうこととする。自動車の自動運転に関する国の対応方針や保険会社の対応も、なお模索する部分はあるが、かなり明らかになって来ており、これらを含めてまとめることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の当初予定よりも物品費や交通費について割安の提供を受けることができたため、当初予算額よりも低く決算することとなり、次年度においてより効果的な予算額の使用とすることを予定して繰り越すこととしたため。 次年度に必要な物品費および交通費として使用する計画である。
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