研究課題/領域番号 |
17K03517
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
横野 恵 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80339663)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 安楽死 / 終末期医療 / 自殺幇助 / カナダ |
研究実績の概要 |
本研究では,カナダ最高裁判決から合法化立法の成立,および合法化後の状況を主たる対象としてカナダにおける積極的安楽死合法化に至る経緯とその背景,合法化立法の内容,合法化の意義と影響,合法化後の実施状況等について医事法学の観点から分析を行う。平成29年度は(1)カナダ最高裁のカーター事件判決(2015年)について下級審判決を含め分析し,同判決が先例であるロドリゲス事件判決(1993年)を変更した根拠・背景を検討した。その結果,ロドリゲス判決以降に憲法解釈が発展しており,それによってカーター事件判決での判例変更が可能になったこと,またカーター事件第一審判決では医療倫理の観点から専門家や一般市民の意識について詳細な検討を行い,いずれも合法化を支持する方向であると認定していることが判例変更の重要な背景になっていることを確認した。また,(2)2016年6月に成立した積極的安楽死合法化立法(連邦法)について日本語仮訳を作成するとともに,カナダ政府の報告書の分析を中心に,立法過程の議論を検討した。合法化立法の日本語訳については,推敲後に紀要への投稿を予定している。また,合法化立法に基づいて制定された連邦政府の指針の下での報告手続等の概要を把握するとともに,連邦法による合法化に伴う各州法の改正状況についての検討にも着手した。これにより,積極的安楽死をめぐる法制度の具体的な運用を明らかにすることができる。合法化後の実施状況については,政府による公式の報告が行われつつあり,その実態を確認することができた。以上の取り組みにより,本邦においてはほとんど先行研究の存在しなかったカナダの積極的安楽死合法化について,合法化までの過程の分析を行い,また合法化後の実態・運用についても分析に着手することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りの研究を実施することができた。 なお,申請当初は想定していなかったが,合法化立法に基づく各州法の整備が行われているため,積極的安楽死の具体的な運用を把握するために検討の必要があると判断し,情報収集に着手した。当初計画していた裁判による憲法上の適用除外の認定の個別事例についての検討は,資料収集にとどまった。具体的内容についての分析は平成30年度以降に可能であれば行うこととしたいが,当面は各州法の整備状況についての検討を優先して行う。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】に記載した変更点を除き,基本的には申請当初の計画に従って推進する。カナダ以外の英米法圏の動向として,2017年11月末にビクトリア州(オーストラリア)で積極的安楽死を合法化するための法律が成立しており,立法の概要や経緯について検討の対象に加えることとする。また,スコットランドでも積極的安楽死合法化のための法案が議会に提出され,支持を集めており今後の動向について情報収集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の使用において当初想定していた価格よりも安価に購入することができたものがあったため。
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