研究実績の概要 |
平成29年度は、貨幣による金銭移転が可能な状況において、非分割財を配分する経済メカニズムの分析を行った。Holmstrom (1979, Econometrica)は、一般的な環境で、耐戦略性と意思決定に関する効率性を満たすメカニズムの集合は、Vickrey-Clarke-Grovesメカニズムの集合であることを証明した。Ohseto (2006, Economic Theory)は、これらのメカニズムの中で非羨望性を満たすものを特定した。一方、Porter, Shoham, and Tennenholtz (2004, Journal of Economic Theory)やCavallo (2006)は、非羨望性を満たさないが、予算不均衡が少ないメカニズムを考案した。平成29年度の研究では、彼らのメカニズムを一般化した集合を定義し、どのような特定化が可能かを分析した。 Kato, Ohseto, and Tamura (2015, International Journal of Game Theory)は、耐戦略性、対称性、予算均衡を満たすメカニズムは存在しないことを証明した。一方、Sprumont (2013, Journal of Economic Theory)は、非分割財を必ずしも配分しないことを認める一般的な枠組みを考えることにより、耐戦略性や対称性を満たす新しいメカニズムの集合を設計した。平成29年度の研究では、Sprumontのモデルのように、非分割財を配分しないことを認めたときに、耐戦略性・予算均衡とある種の公平性を満たすメカニズムの集合を特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、貨幣による金銭移転が可能な状況において、非分割財を配分する経済メカニズムの分析を行い、次の2点について研究の進展があったため。 (1) Porter, Shoham, and Tennenholtz (2004, Journal of Economic Theory)やCavallo (2006)のメカニズムを一般化した集合を定義し、どのような特定化が可能かを分析した。 (2) Sprumont (2013, Journal of Economic Theory)のモデルのように、非分割財を配分しないことを認めたときに、耐戦略性・予算均衡とある種の公平性を満たすメカニズムの集合を特定した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、貨幣による金銭移転が可能な状況において、非分割財を配分する経済メカニズムの分析を行ったが、次の2点について引き続き研究を継続する。 (1) Porter, Shoham, and Tennenholtz (2004, Journal of Economic Theory)やCavallo (2006)のメカニズムを一般化した集合を、効率性や公平性の公理を用いて完全な特定化を行う。 (2) Sprumont (2013, Journal of Economic Theory)のモデルにおいて、耐戦略性・予算均衡とある種の公平性を満たすメカニズムの集合を特定したが、その結果を様々な方向に拡張する。
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