研究実績の概要 |
令和2年度は、1種類の私的財が一定量存在し、経済主体がその財を私的に初期保有しており、その財に対して単峰性選好を持つ経済に関するメカニズムを考察した。メカニズムが満たすべき公理として、耐戦略性・効率性・個人合理性の3つが特に重要である。過去の研究において、Barbera, Jackson, and Neme (1997, Games and Economic Behavior)は、耐戦略性・効率性・個人合理性・交換単調性の4つの公理を満たすメカニズムの集合を特定した。Zhao and Ohseto (2020)は、耐戦略性・効率性・比率に関する非羨望性の3つの公理を満たす唯一のメカニズムを特定し、そのメカニズムが個人合理性を満たすことを証明した。Barbera, Jackson, and Nemeのメカニズムの集合に、Zhao and Ohsetoのメカニズムが含まれていることを確認し、2つの論文の結果の関係について詳細な比較検討を行った。さらに、Zhao and Ohsetoのメカニズムを運用するためのアルゴリズムを開発した。 研究期間全体を通じて、貨幣による金銭移転が可能な場合に、非分割財を配分するためのメカニズムを考察した。1つの研究の方向は、Vickrey, Clarke, Grovesらによる有名なメカニズムの再検討である。効率性や公平性の観点からよりよいメカニズムを設計し、新たな公理群によるメカニズムの特定に取り組み、いくつかの重要な研究成果を得ることができた。もう1つの研究の方向は、非分割財を必ずしも配分しないで処分することを認めることにより、よりよいメカニズムの設計の可能性を検討した。耐戦略性・予算均衡という公理を重視し、さまざまな公平性を満たすメカニズムの設計に取り組み、いくつかの重要な研究成果を得ることができた。
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