研究課題/領域番号 |
17K03641
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (70251733)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経済学史 / 政治経済学 |
研究実績の概要 |
2018年度は、現代政治経済学の教科書(単著)の執筆にほとんどを費やした。現代の主流派である新古典派経済学との対抗関係を明らかにしながら、政治経済学の多様なアプローチにもとづき、資本主義経済の基本的仕組みについて解説するものであり、近く公刊の予定となっている。 新古典派経済学の理論については夥しい数のミクロ経済学とマクロ経済学の教科書が存在する一方で、政治経済学では入門レベルの教科書はいまだ少ない。これまでマルクス経済学の教科書は数多く刊行されているものの、それらのほとんどは、『資本論』の体系に沿ってマルクスの経済理論を解説することに主眼がおかれている。今日においても、マルクスの経済理論を学ぶことに大きな意味があることは疑いないものの、現代の資本主義経済をとりまく諸問題を理解するためには、マルクス経済学の新しい展開についても知る必要があるし、さらには、ケインズとカレツキを源泉とするポスト・ケインズ派の経済学についての知識も欠かすことができない。 本書では、マルクスの経済理論の主要部分についての基本的な知識を得ることができるように配慮する一方で、現代マルクス経済学やポスト・ケインズ派経済学における新しい理論的成果も積極的に取り入れている。しかし、さまざまな学説を並列的に紹介するのみに終わるのではなく、それらの学説のあいだの共通点と相違点、および補完関係についても論じているので、読者は、マルクスとケインズの総合によって新古典派経済学に対する代替理論の構築を進めている政治経済学の今日的な意義と課題について大まかな理解を得ることができるはずである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、学説史的展望にもとづき、ポスト・ケインズ派経済学の形成・発展の過程について考察するとともに、その今日的な意義と可能性を闡明しようとする点にある。この目的を達成するため、2018年度は、教科書(単著)の執筆を通じて、ポスト・ケインズ派経済学をはじめとする現代政治経済学の全体像の把握に努めた。その成果は、近く公刊の予定となっている。これまでの成果にもとづき、ポスト・ケインズ派の理論・方法・政策についての検討を、今後さらに進めていくことができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえて、ポスト・ケインズ派経済学の形成と発展の過程についての考察を進めていく。それと併せて、ケインズとカレツキの学説史的検討、ラディカル政治経済学の新動向の把握などの作業も並行して進めていく。研究期間全体を通じて、経済学における過去と現代のあいだの往復作業を続けていくことになるであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度には、ほぼ計画通りに研究費を使用し、その結果、47,858円を次年度に繰り越すこととなった。2019年度についても、当初の申請からの大きな変更はない。研究費の大部分を経済理論・経済学史関係の図書の購入に充てるとともに、必要に応じて、資料収集のための国内旅費、および謝金などの支出を行なう予定である。
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