研究課題/領域番号 |
17K03641
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鍋島 直樹 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (70251733)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経済学史 / 政治経済学 |
研究実績の概要 |
2019年度には、『現代の政治経済学――マルクスとケインズの総合』(ナカニシヤ出版、2020年2月)を刊行した。本書は、ポスト・ケインズ派やマルクス派の理論をはじめ、政治経済学の基礎と現代的展開について平易に解説した学部生向けの教科書である。それと同時に本書は、政治経済学の領域において相応の学術的貢献を行なうことを意図したものでもある。現代の主流派である新古典派経済学との対抗関係を明らかにしつつ、政治経済学の多様なアプローチにおける幅広い成果を体系的にまとめた著作は、これまで国内外を通じてほとんど存在しておらず、本書は、政治経済学の研究において新たな視点と方法を提供するものであると考えている。 政治経済学のアプローチの特色は、資本主義経済のいたるところに見出される利害対立や権力関係の作用に分析の光を当てている点にある。その見方は新古典派経済学と著しい対照をなしている。新古典派の理論では、富の生産、資源配分、所得分配などの経済的結果が市場における人々の自発的な取引を通じて決定されると考え、経済理論から権力の作用を排除しているからである。これに対して政治経済学の理論は、権力や支配など、資本主義経済の内部における政治的要因のはたらきを明らかにしようとするのである。 1980年代以降の先進資本主義諸国においては、「小さな政府」の実現を唱え、経済問題の解決を市場のはたらきに委ねる新自由主義の路線が経済政策運営の基調とされるようになり、その結果、所得格差と貧困の問題が深刻なものとなった。所得格差の是正を求める声が世界各国で高まるとともに、新自由主義政策の限界が叫ばれる今、代替的な経済政策とその理論的基礎を構築することが経済学の重要課題となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、学説史的展望にもとづき、ポスト・ケインズ派経済学の形成・発展の過程について考察するとともに、その今日的な意義と可能性を闡明しようとする点にある。この目的を達成するため、2019年度には、ポスト・ケインズ派経済学をはじめとする現代政治経済学の全体像の把握に努め、その成果は単著書として公刊された。これまでの成果にもとづき、ポスト・ケインズ派の理論・方法・政策についての検討を、今後さらに進めていくことができるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえて、ポスト・ケインズ派経済学の形成と発展の過程についての考察を進めていく。それと併せて、ケインズとカレツキの学説史的検討、ラディカル政治経済学の新動向の把握などの作業も並行して進めていく。研究期間全体を通じて、経済学における過去と現代のあいだの往復作業を続けていくことになるであろう
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度には、ほぼ計画通りに研究費を使用し、その結果、120,923円を次年度に繰り越すこととなった。繰り越しが生じたのは、年度末に開催予定の学会などが相次いで中止・延期となり、出張が取りやめになったことによる。 2020年度についても、当初の申請からの大きな変更はない。研究費の大部分を経済理論・経済学史関係の図書の購入に充てるとともに、必要に応じて、資料収集のための国内旅費、および謝金などの支出を行なう予定である。
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