研究課題/領域番号 |
17K03650
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
生垣 琴絵 沖縄国際大学, 経済学部, 講師 (90646093)
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研究分担者 |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40281779)
丸山 千賀子 金城学院大学, 生活環境学部, 教授 (20324965)
水原 俊博 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (10409542)
根本 志保子 日本大学, 経済学部, 教授 (70385988)
畑山 要介 立教大学, 社会学部, 特別研究員(日本学術振興会) (70706655)
伊藤 賢一 群馬大学, 社会情報学部, 教授 (80293497)
神野 由紀 関東学院大学, 人間環境学部, 助教授 (80350560)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 消費社会 / 市民社会 / 消費者 / 消費者運動 / フェアトレード |
研究実績の概要 |
平成29年度は2回の研究会を開催し,消費社会論および市民社会論についての共通理解を深めることに重点を置いた。 第1回研究会(10月28日(土))では,畑山要介(研究分担者)の『倫理的市場の経済社会学:自生的秩序とフェアトレード』(学文社,2016年)の合評を通じ,社会学の動向と消費社会論との関連について共通理解を得た。また,伊藤賢一(研究分担者)による報告「現代の時間意識と消費」では,G. Ritzerのマクドナルド化理論の批判的検討とH. Rosaによる加速化論と消費社会論との関連に関する議論が,生垣琴絵(研究代表者)の報告「ヘーゼル・カークの消費経済論」では,研究目的に掲げた論点1(経済思想・学説における市民社会論)の理論的基盤と源流が示され,この論点に関する共通理解が深まった。 第2回研究会(2月19日(月)-20日(火))では,神野由紀(研究分担者)「消費社会における手作りの意味-手作りインテリアをめぐる考察-」,石塚千賀子(研究協力者)「非生活必需品のリピート販売における販売員の役割と消費者態度の変化」,丸山千賀子(研究分担者)「世界の消費者運動の動向とオーストラリアの消費団体」の3報告が行われた。神野報告では,第二次大戦後の日本における女性と手作り(手芸)の関連とその後の大量生産品に囲まれた消費社会への批判的文脈から生じるハンドメイド(DIY)の流れと本テーマとの関連が示された。石塚報告は,消費者行動研究の一つとしてのサービス・マーケティング・アプローチの有効性を示し,個別の消費者行動の分析から消費社会の像が浮き彫りにされた。丸山報告は,オーストラリアの消費者団体へのインタビューから消費者運動における政府と消費者団体との関わりに注目した実態が紹介され,研究目的の論点2(消費者運動の精神史構築)の理解を促した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要に示した通り2回の研究会開催において,本年度の計画に示した「各自の研究を進め研究会で共通理解を深める」という点はおおむね達成できていると考えている。研究目的として掲げた2つの論点(論点1:経済思想・学説における市民社会論,論点2:消費者運動の精神史構築)とメンバーの個別論点についてみると,以下1)に示す論点については,十分な共通理解と検討が進んでいると考えている。しかし,2)にまとめた論点については,報告の機会を次年度に持ち越すこととなったため,共通理解および検討は今後の課題である。以上のことから,本プロジェクトは,「おおむね順調に進展している」と考えている。 1) 進展のあった論点:「70年代以降の国内外の消費者運動」(丸山),「経済思想における消費者と市民社会論の源流・展開」(生垣),「近代初期の消費社会の生成過程と商品デザイン」(神野),「マクドナルド化批判とコミュニタリアン的市民社会」(伊藤),「環境ブランド消費の市民社会論的意義」(石塚)については,研究会での報告から共通理解を深めることができたため,今後の検討を進める準備が整ったと言える。「日本の有機農業・産消提携の思想的再構築」(根本)については,本プロジェクトが始動した平成28年度の研究会において報告があり,29年度に論文「倫理的消費-消費者による自発的かつ能動的な社会関与の意義と課題」(『一橋経済学』第11巻、第2号、pp.1-18)として成果が得られた。以上から,論点1および論点2の両方に関わる内容の共通理解がおおむね進んでいると言える。 2) 今後共通理解と検討を進める論点:「70年代における『依存効果』批判と生活協同組合運動の関係」(共同),「経済思想における市民社会論の批判的検討」(橋本),「記号的消費社会論の市民社会論的含意」(水原),「グローバリズム対抗運動にみる市民的消費者の思想」(畑山)
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度と同様,年2回の研究会を開催し共通理解を深めるとともに,個別の論点についての検討を進めていく。同時に,今年度の主たる目的は,一連の研究報告の関連を明確にすべく検討することであり,その際,とりわけ第1の論点(経済思想・学説における市民社会論)に関連したテーマである「70年代における『依存効果』批判と生活協同組合運動の関係」(共同)を検討することをメインとする。そこから80年代の消費社会論が,経済思想における市民社会論を断絶させたのか否かについて議論を深めたい。また,平成30年度は,計画にある通り研究会にゲスト・スピーカーを招聘し,周辺領域の研究に対する理解を深めることとする。また,30年度中に,研究成果の書籍にまとめる計画についてプロジェクト終了時までを見据え,スケジュールを具体化したい。 【研究会開催予定】 平成30年10月13日(土)-14日(日)新潟大学 平成31年2月(開催日未定)北海道大学東京オフィス (ゲスト・スピーカーを招聘予定)
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は初年度ということもあり,計上していた資料(図書等)の収集が遅れたため残額が大きくなった。また,29年度はゲスト・スピーカーの選出ができず招聘を行えなかったことも一因であるため,次年度は招聘を行なう。 平成30年度は,当初の計画に沿って資料収集を迅速に進めることとする。さらに,研究会の2回開催(新潟,東京)することが決定しているため旅費の執行を進めるとともに,ゲスト・スピーカーを招聘し,報告内容に見合った適切な額の謝金を提供することとする。
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