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2019 年度 実施状況報告書

上司の行動変化が部下の生産性に及ぼす影響―ウェアラブルセンサによるフィールド実験

研究課題

研究課題/領域番号 17K03676
研究機関一橋大学

研究代表者

都留 康  一橋大学, 経済研究所, 名誉教授 (00155441)

研究分担者 中島 賢太郎  一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60507698)
上原 克仁  静岡県立大学, 経営情報学部, 准教授 (60509157)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード経済政策 / 日本経済論 / コミュニケーション / 生産性 / ウェアラブルセンサ
研究実績の概要

日本企業,とりわけ知識集約型産業である情報通信技術関連企業は,近年,海外勢の急速なキャッチアップに直面し,かつての勢いを失っている.日本企業再生のためには,マクロの需要創造や規制緩和などの政策に加えて,究極的にはミクロ・レベルでの企業の生産性向上が不可欠である.それでは,生産性向上のためにはどのような施策が必要なのか.本研究は,この問いに対し,企業の組織能力の観点から分析を行った.特に本研究では,①社員にウェアラブルセンサを装着してもらい社員間のコミュニケーションデータを収集する,②組織活性化のための人事施策の効果に関するフィールド実験を行い,生産性向上のメカニズムを具体的に明らかにすることを目指した.なお,本研究の調査対象は,日本の大手情報通信技術関連企業の子会社である法人顧客向けの問題解決センターで所在県の異なるA・Bの2事業所である.本研究では,施策の導入後にマネージャーの率いる個人とチームの成果に与える施策の効果を評価する.しかし,単純な前後比較では意味がないため,フィールド実験の知見を導入した.すなわち,施策を適用されたマネージャー(「処置群」)のほかに,適用されないマネージャーも「対照群」として設定し,部下とチームのパフォーマンスの前後差を測定した.その際,施策適用者をA事業所に限定しつつ計測は2事業所で行った.得られたデータを分析した結果は次の通りである.
(1)施策を適用されたチームと受けなかったチームの成果比較を行うと,適用されたチームの成果は向上した.
(2)この結果がコミュニケーションを通じたものなのかを検証した.リーダーが受講したチームはチームメンバーの「媒介中心性」が高まり,その高い媒介中心性が事業所内問題解決率を向上させた.社内コミュニケーション環境が向上し,その結果は,上昇したメンバーの媒介中心性によって業務成果が向上したメカニズムを示唆している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画に則り研究は進展しているので,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.

今後の研究の推進方策

当初計画通り,今後は,先行研究の中での明確な位置づけとデータ分析をさらに厳密に行い,執筆している論文を欧米のトップ・ジャーナルに投稿する.
なお,当初計画において,フィールド実験(ウェーブ2)として予定していた,B事業所の受講後のウェアラブルセンサによるコミュニケーション状況の計測は,リサーチ・デザインの見直しにより割愛した.施策を適用されたマネージャー(「処置群」)のほかに,適用されないマネージャーも「対照群」として設定し,部下とチームのパフォーマンスの前後差を測定した.施策適用者をA事業所に限定しつつ計測は2事業所で行うことで論文執筆上の情報は十分と判断されたためである.

次年度使用額が生じた理由

(1)当初計画にあったフィールド実験(ウェーブ2)の割愛により,それに要する経費を節約できた.
(2)2019年度末に予定していたカリフォルニア大学ハース経営大学院(バークレー)への出張が「コロナウイルス感染症」の影響(米国への渡航制限)により実施できなくなった.
(3)2020年度には,論文を執筆し,渡航制限の解除後に米国に赴き,セミナー報告を行う予定である.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Multitasking Incentives and the Informativeness of Subjective Performance Evaluation2020

    • 著者名/発表者名
      Shingo Takahashi, Hideo Owan, Tsuyoshi Tsuru and Katsuhito Uehara
    • 雑誌名

      Industrial & Labor Relations Review

      巻: 印刷中 ページ: 1-33

    • DOI

      10.1177/0019793919891980

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Workplace communication, problem solving, and productivity:New evidence from wearable sensors and matched survey data2020

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Nakajima,Tsuyoshi Tsuru, and Katsuhito Uehara
    • 雑誌名

      Working paper

      巻: - ページ: 1-28

  • [雑誌論文] 知的生産活動の経済空間2019

    • 著者名/発表者名
      中島賢太郎
    • 雑誌名

      宇井貴志, 加納隆, 原千秋, 渡部敏明編『現代経済学の潮流 2019』東洋経済新報社

      巻: - ページ: 127-148

    • 査読あり
  • [学会発表] リーダーの行動変化は職場内コミュニケーションと生産性をどう変えたか?ウエアラブルセンサによる検証2020

    • 著者名/発表者名
      都留康・中島健太郎・上原克仁
    • 学会等名
      A社への成果中間報告研究会
  • [学会発表] 製品アーキテクチャと人材マネジメントー中国・韓国との比較からみた日本2019

    • 著者名/発表者名
      都留康
    • 学会等名
      国際産業関係研究所セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Impact of workplace communication networks on productivity: A new approach using wearable sensors2019

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Nakajima
    • 学会等名
      9th European Meeting of the Urban Economics Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Impact of workplace communication networks on productivity: A new approach using wearable sensors2019

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Nakajima
    • 学会等名
      14th Meeting of the Urban Economics Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Impact of workplace communication networks on productivity: A new approach using wearable sensors2019

    • 著者名/発表者名
      中島賢太郎
    • 学会等名
      The 9th Meetings on Applied Economics and Data Science
    • 招待講演
  • [学会発表] Impact of workplace communication networks on productivity: A new approach using wearable sensors2019

    • 著者名/発表者名
      中島賢太郎
    • 学会等名
      小樽商科大学土曜研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] Impact of workplace communication networks on productivity: A new approach using wearable sensors2019

    • 著者名/発表者名
      中島賢太郎
    • 学会等名
      法政大学経済学セミナー
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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