研究課題/領域番号 |
17K03685
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
水谷 文俊 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60263365)
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研究分担者 |
中村 絵理 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00611071)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 組織 / ガバナンス / 公益企業 / 組織規模 / 効率性 / 構造分離 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、公益事業の組織とガバナンスの関係について実証的に分析することである。具体的な研究の柱は大きく3つから成っている。まず第一は、公益事業の効率性に寄与するガバナンス要因を探ることである。そして第二は、公益事業の組織規模をガバナンスの視点から分析することである。最後の第三は、公益事業の組織内部のガバナンスを階層性によるコントロールの視点から分析することである。これらの内容について、①先行研究とデータの収集と整理、②モデル構築、③予備分析、④予備分析結果の解釈と妥当性及び改善案の検討、⑤データの補完と追加的資料の収集、⑥本分析、⑦結果の解釈と検討、⑧論文執筆、⑨海外査読付き雑誌への投稿、という9つのステップで実施する。 そして、研究二年目である平成30年度は、公益事業の効率性に寄与するガバナンス要因を探ることを中心とした内容の研究を実施した。また、昨年度実施した先行研究の分析整理から、個別の公益事業においての構造分離の要因や関連産業をも含んだ需要サイドの分析も必要であることもわかったので、本年度においてはこのような分析も追加して行った。 本年度実施した具体的研究としては、①水道事業を対象にした組織内分業と総費用の間の内生性を考慮した確率費用フロンティアモデルのベイズ推定、②鉄道事業を対象としたガバナンス・組織形態の影響分析、③高等教育産業における学費の決定要因の分析、などである。こういった一連の分析結果について、筆者らはヨーロッパの研究会やワークショップを活用し、国内外の研究者と議論を行ってきた。実際、平成30年度は、リーズ大学(イギリス)、ローマ・ラ・サピエンツア大学(イタリア)、そして中央研究院経済研究所(台湾)などで意見交換を行った。そして、それらの研究成果を国内外の学術誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の進捗状況は、「(2)おおむね順調に進展している」、と評価している。 先にも述べたように、4年間の全体計画の中で、一連の研究ステップは①先行研究とデータの収集と整理、②モデル構築、③予備分析、④予備分析結果の解釈と妥当性及び改善案の検討、⑤データの補完と追加的資料の収集、⑥本分析、⑦結果の解釈と検討、⑧論文執筆、⑨海外査読付き雑誌への投稿、の流れで実施する。そして、2年目以降は、主要な研究テーマ(必要となった追加テーマも含む)を各年度で実施するという計画になっている。 平成30年度は、前年度までに行なってきた内容(先行研究やデータの整理し、基本的な先行モデルの構築、予備分析結果)をもとに、特に、効率性とガバナンスの関係について本格的な分析を行なった。これまで(昨年度までに)筆者らが行なってきた研究結果は、『Utilities Policy』、『Empirical Economics』、『国民経済雑誌』に掲載された。また本年度行ってきた分析結果については、リーズ大学(イギリス)、ローマ・ラ・サピエンツア大学(イタリア)、そして中央研究院経済研究所(台湾)などの研究者とワークショップやセミナーを通じて議論を行ってきた。実際、その過程では特に大きな問題は指摘されなかった。そして、これらの知見をもとに研究論文を修正・完成させ、国内外の学術誌に投稿して行く。そして、次年度以降も、本年度得られた知見や内容をも加味した分析を行う。 以上のことから、平成30年度は、「おおむね順調に進展している」、という評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
三年目である平成31年度は、本研究の第二の目的(公益事業の組織規模をガバナンスの視点)に対応した研究と、これまで分析で重要だとわかった「需要とガバナンスや組織形態の関係」に関して、ステップ⑤から⑨(すなわち、⑤データの補完と追加的資料の収集、⑥本分析、⑦結果の解釈と検討、⑧論文執筆、⑨海外査読付き雑誌への投稿)までを実施する。また公益事業に関連した産業として高等教育産業においてもガバナンスと関連が深いことがわかったので、この産業の費用構造の分析も追加する。 具体的には、公益企業の最適規模に関する研究では、都市人口やネットワーク性などの視点から組織規模を説明するものが多い。第一の目的で明らかにされたガバナンス持つ様々な影響をもとに、公益企業の組織規模の決定メカニズムを明らかにする。ここでは、先行研究における公益企業の最適規模にガバナンスの視点を導入して分析することで公益企業の組織構造に新たな観点を示す。このように、二年目の研究で得られた結果を発展させ、公益事業の組織規模の決定要因をガバナンスの視点から実証的に分析する。さらに、構造分離の要因や需要サイドの分析として鉄道産業を対象に需要とガバナンスや組織形態の関係、公益事業のガバナンスに関連する産業の分析としては大学の費用構造とガバナンスの関係の分析、を行う。 なお、このような課題を平成31年度に本格的に取り組むが、前年度と同様に、実証分析に必要となる追加的データや、結果の解釈のために必要となる関連文献の収集を行う。また、分析結果の整理・解釈を改善していくうえで、学会発表を行い当該分野の研究者から知見を得るために、国内外で行われる学会での研究発表を通して、研究内容にフィードバックをかけることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の繰越金が発生した主な理由は、次のとおりである。当初、国内外の研究者との意見交換や情報収集のための旅費や海外研究発表のための海外旅費、そしてデータの補完作業のための補助人件費や謝金を想定していた。幸い平成30年度に関しては、本科学研究費以外の研究資金によって、調査、意見交換そして学会発表などの活動を行うことができたという点、また、データの補完作業も想定していたほどの量は発生せず、自分たちで作業を行うことができたという点、の2つが挙げられる。 平成31年度には、いくつかの重要な海外のカンファレンスやワークショップなどが予定されており、今回の繰越金全額を海外研究発表の旅費として使用することを予定している。
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