研究実績の概要 |
本プロジェクトの初年度となる平成29年度には、本研究課題の出発点となる研究論文の改訂・出版作業を進めると同時に、日本における移民流入効果の分析に適した理論モデルの構築、およびカリブレーションに必要とされるデータ作成をマイクロデータより構築する作業を進めた。 まず、2000年代のスペインへの移民の大量流入を政治経済モデルを用いて定量的に分析したTanaka, Farre, and Ortega (2018)の改訂作業を行った。その結果、European Journal of Political Economyから出版できた。また、その姉妹論文であるFarre, Ortega, and Tanaka (2018)の改訂作業もすすめ、Labour Economicsより出版することができた。 理論モデルの構築においては、前述の論文Tanaka, Farre, and Ortega (2018)のモデルをベースにし、日本における移民受け入れを分析する上で簡単化するために、まず移民の出身国の異質性を捨象した上で、所得分布が移民の流入によって外生的に変化することを考慮したものにした。ある程度現実的な移民受け入れシナリオの元で想定されるものと整合的な所得分布の変化を外生的に与えた上でも、理論モデルは安定的な結果となることを確認できた。 データの作成においては、理論モデルのパラメターを設定する上で必要となる所得分布を全国消費実態調査から、また小中学校における公私生徒比率、私教育支出、公教育支出といった情報を学校基本調査より作成した。上記の理論モデルと今年度作成したデータを用いて、理論モデルのパラメターのカリブレーションを試みることができた。
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