研究実績の概要 |
本プロジェクトの2年目となる平成30年度には、日本における移民流入効果の分析に適した理論モデルの構築、およびカリブレーションに必要とされるデータをマイクロデータより構築する作業、およびいくつかのシナリオのもとでの移民流入が公教育支出に与える影響の定量的な評価を進めた。 まず、平成29年度に改定作業を進めていた論文が出版された。2000年代のスペインへの移民の大量流入を定量的に分析しFarre, Ortega, and Tanaka (2018)をLabour Economicsの4月号から出版することができた。 理論モデルの構築においては、前述の論文Tanaka, Farre, and Ortega (2018)のモデルをベースとした所得分布を外生的に変化させることで公教育支出の選択が変わるモデルを用いて、日本における少子高齢化や、それを補間するために必要な移民数に関するシナリオを複数考慮し、それぞれのシナリオの元での公教育支出の計算を行うことができた。それによると、移民と日本人の児童生徒に関する想定として、特に教育費用と家計所得、さらに子供数に関する仮定は定量的にも大きな影響を与えることがわかった。 データの作成においては、移民の流入によって教育成果がどのように変化するのか、また教育に対する需要がどう変化するのかに関しての定量的な知見を得るために新たなデータ利用申請を行い、シミュレーションに必要とされるデータの構築を行なった。
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