研究課題
日本企業の特徴は、各上場企業の傘下に、連結対象となる子会社が複数存在する企業グループとして活動している点にある。このことから、セグメント別の同一法人格を基本とする米国企業との違いに注目しながら分析を行うことが本研究の一つの特長となる。具体的には、連結に基づく会計情報のみの米国企業に対して、日本企業を分析対象とすることで、連結と単体の二つの会計情報に基づき分析が可能である。ところで、1990年代後半の金融危機の際に、いわゆるゾンビ企業が日本経済の停滞の一つの要因として注目された。このことは、ゾンビ企業を対象とする分析において、グループ経営の観点から、ゾンビ企業がどのように温存、淘汰されたのかの分析については、日本企業を対象とすることで初めて実行可能となることを意味している。本研究では、上記の問題意識に基づき、実証的に検証を行うものである。本年度は、上記の分析を遂行するために必要なデータセット整備を中心に行った。企業グループの特性を把握するためのデータセットの構築、M&Aの実施状況をタイプ別に把握するためのデータセットの構築を軸に、データの収集と編集作業を中心に行った。これに関連して、上場企業の単体と連結別のデータに基づく分析を行っており、論文の原稿としてまとめた段階にある。また、M&Aに関する研究については、銀行・企業間関係がM&Aのタイプ別の決定要因としてどのような影響をもたらすかについて分析を行っている。さらに、関連する先行研究について、ゾンビ企業を直接の分析対象とするもの、あるいは追い貸しなど、間接的にゾンビ企業の存在に影響を与えうる要因を分析対象とするものの観点からサーベイを行った。これらの先行研究の整理を行うことで、分析の発展可能性について、論点整理を行った段階にある。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従い、データセットの構築が順調に進んでいるためである。
今年度作成したデータセットと、当初の計画案に基づき分析を遂行し、順次、論文としてまとめていく作業を継続する。
当初の購入計画のデータについて、支出を抑える形で同等のデータセットを構築できたためである。次年度の使用計画としては、当初の予定通り、ワーキングペーパーとしてまとめ、順次、国内外の学会報告を行っていく予定である。そのプロセスにおいて、追加分析が必要となった場合、追加データの購入を必要に応じて行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Research in International Business and Finance
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