日本の戦後復興期の失業率は国際的に見て最も低かった。戦勝国よりも敗戦国の方が失業率が低いのは奇妙であると考えられ、日本の失業統計は失業者を不当に少なく発表しているとの疑念がかけられてきた。本稿はそうした見方を二点で実証的に否定した。第一は、当時の失業統計が、経済的好況期のアメリカで採用された方法に従っていたため、敗戦で急増した日雇労働者等が失業者にカウントされなかったこと、第二は、消費財の価格・流通統制がヤミ商人の急増をもたらし、農業部門とともに低所得の自営就業者を大量に吸収したことである。これによって日本が意図的に失業率を引き下げていたという疑いは実証的にも論理的にも否定された。
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