研究課題/領域番号 |
17K03918
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西出 優子 東北大学, 経済学研究科, 教授 (60451506)
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研究分担者 |
上西 智子 東北大学, 経済学研究科, 特任准教授 (70420023)
李 浩東 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (10803059)
中尾 公一 東北大学, 経済学研究科, 博士研究員 (60807098)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非営利組織 / 社会関係資本 / 教育 / リーダー / 社会イノベーター |
研究実績の概要 |
初年度の29年度には、次世代ソーシャルリーダー育成・人的資源管理、リーダーシップ、社会関係資本の理論的政策的動向や教育・評価の理論や手法に関する文献調査を行った。また、次世代ソーシャルリーダーの育成およびリーダーシップ開発の現状と課題を社会関係資本の視点からその形成・阻害要因を中心に分析するための、予備的な訪問調査を企画実施した。 (1)文献調査:ソーシャルイノベーターの育成・リーダーシップおよび社会関係資本の最新の理論的動向や、教育手法・評価手法の開発に向けた関連文献をレビューした。 (2)国内聞き取り調査:代表者の在籍する東北地域を中心に、ソーシャルイノベーターのライフ・ヒストリーの聞き取り調査を行なった。また、実践的学びを通した次世代ソーシャルリーダーの育成およびリーダーシップ開発の実態調査のための予備的調査を実施した。 (3)教育手法・評価手法の開発:NPOと自治体と連携して、地域課題解決に向けたアイディア創出に関する、社会関係資本をふまえた実践型演習を開発し、30年度の実施・分析の企画立案を行なった。また、既存調査をもとに、次世代ソーシャルリーダーの育成およびリーダーシップ開発に向けた自己評価指標案(セルフチェックシート)を開発した。これを30年度の教育実践において活用することとした。 (4)研究成果の発信:本課題研究に関する成果を、ARNOVA-Asia、組織学会、地域活性学会、日本マーケティング学会、日本情報経営学会、『現代経営研究』、『Transactions of the Academic Association for Organizational Science』等、国内外における学会報告・論文発表を通して発信した。また、社会イノベーター・NPOリーダーによる公開セミナーを開催し、彼らのライフヒストリーや成長のプロセス、経営・人生哲学等について示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・分担者ともに、各専門領域・役割分担分において、文献調査や教育手法の開発、調査先候補の選定、セミナー開催等、おおむね順調に進めることができた。また、国内外における関連学会での研究報告や論文投稿・出版など、研究成果の発信も行なうことができた。主な成果発信は以下の通りである。 「公共・非営利領域の対境担当者-震災復興過程の文脈での検討-」Transactions of the Academic Association for Organizational Science 2017,Vol.6,No.1,pp.100-107.「コミュニティ形成における 住民の主体性発揮プロセス-震災復興の文脈を中心とした検討-」2017年9月2日,地域活性学会第8回研究大会.「ICT・IoT を活用した健康管理サービスにおける情報リテラシー戦略の動向」2017年11月18日ー19日, 日本情報経営学会 第75回全国大会. さらに、30年度からは、29年度に開発した教育・評価手法の実践・分析等の領域を拡大するため、研究分担者を3名追加する計画を立て、役割分担を含めた研究打合せも進めるなど、本研究課題をさらに進展させるための準備も行なった。ただし、29年度当初には予定していた海外調査やアンケート調査は実施しなかった。これは、文献調査・国内調査結果をふまえたうえで、慎重に調査先や調査項目を選定して30年度に行なうほうが良いと判断したためである。 したがって、初年度の進捗としては順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
30年度においては、研究分担者を追加し研究体制を拡充させたうえで、以下の通り研究を推進させていく。 1)文献調査:初年度の各調査結果を踏まえて文献調査を進展させる。 2)国内調査:初年度の調査結果を踏まえて、社会関係資本の視点から人材育成の促進・阻害要因やコンピテンシー、その波及効果および適用可能性について、インタビューや参与観察、フォーカスグループ等の調査を進める。 3)海外調査:対象地域を選定し、現地調査を実施する。具体的には、米国テキサス州や香港・中国におけるイノベーター・リーダーシップ教育の実態を調査する。 4)教育・評価手法の開発と実施:初年度に開発した社会関係資本をふまえた教育・評価方法を用い、実際に教育・評価を実施し、その結果を踏まえて手法の改善を図る。これには、NPO論、ソーシャル・ビジネス論、ソーシャル・アントレプレナーシップ教育、ボランティア活動の担い手育成、震災復興の担い手育成、PBL教育、代表者・研究分担者・追加の分担者の各専門分野・担当科目において幅広く実施する。 5)研究成果の発信:30年度においては、社会の多様な人々を包摂できるダイバーシティ的資質を備えたリーダー育成の教育手法開発に向けて、多様性の視点から長年運動・活動を継続してきたイノベーターによるセミナーや、グローバルな視点でNPOの政治的中立性を考察するセミナー、NPOや社会イノベーションの研究・実践者によるセミナー等を幅広く開催する。また、29年度から30年度にかけての研究成果は、国際学会(ARNOVA、ARNOVA-Asia、ICSEA)や日本NPO学会、組織学会など、内外の関連学会で発表し、改善に向けたフィードバックを得る。その結果得られた改善点を踏まえて研究の成果を取りまとめ、学術誌にて論文を投稿する。また、研究セミナーやウェブサイトを通して、成果を幅広く国内外に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は29年度にアンケート調査と海外調査を実施する予定であったが、以下の理由により29年度には行わず、30年度に実施することにしたため。 29年度は初年度であったため、はまず文献調査と国内調査を行ない、その結果をふまえた上で、インタビューの予備調査を行なった。さらに、今後の実施に向けて、アンケートの調査対象や調査項目、海外調査先の選定などの調査設計を入念に行なった。 そのため、30年度には、アンケート調査やインタビュー調査の実施、海外調査や国内外での学会における成果発表を複数回行なう予定であり、これらに使用する予定である。例えば、ARNOVA-Asia(香港)、ARNOVA(米国)といった国際学会や、組織学会や日本NPO学会等での成果報告や、米国の社会イノベーターやNPOの人材育成・教育機関の訪問調査を計画している。
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