研究課題/領域番号 |
17K03959
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
公文 溥 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (50061239)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 技能移転 / 基本技能 / GPC / トヨタ自動車 |
研究実績の概要 |
2018年度の調査研究は、北米のトヨタ自動車の工場を訪問することであった。予定通り、2018年の6月11日から22日までの間に、カナダ、米国のケンタッキー、アラバマ、テキサス、そしてメキシコの5つの工場を訪問することができた。 調査課題は、改善技能の国際移転であり、5つの工場でそれぞれ技能移転の現状を確認できた。トヨタは北米に8つの工場を持っているが、今回訪問した5つの工場は、乗用車、エンジンそして小型トラックを製造する、性格の異なる工場である。すなわち、カナダと米国のケンタッキーは乗用車、アラバマはエンジン、テキサスとメキシコは小型トラックを製造する。 米国ケンタッキーの工場では、工場ともにGPC(Global Production Center)でインタビューを行うことができた。GPCは、トヨタ自動車が技能移転機関として、北米、アジア、欧州の3地域に設置したものである。北米のGPCがケンタッキー工場に隣接して設置されている。そこで各工場むけのインストラクターを育成し、インストラクターが工場に帰って従業員に技能教育を行うのである。 トヨタ自動車は本格的な海外展開を始めて約30年経つ。この間、欧米諸国とは異なる独自の生産システムを移転するべく、技能移転に工夫をした。それがGPCである。基本技能なる概念を確定し、技能を標準化した。同時に現場監督者の技能教育も行うのである。 ケンタッキーのGPCで育成されたインストラクターが、各工場において生産工、保全工、そして現場監督者を教育することを確認した。そして現場監督者が、労働者にOJT(on-the-job-training、職場内訓練)を行うこと、さらには労働者が小集団活動を通して、現場の改善活動を行うことなどを、見聞することができた。なお、北米調査と合わせてチェコの日本企業を訪問する機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本調査研究の課題は、トヨタ自動車を対象として技能の国際移転の実際を明らかにすることである。トヨタ自動車は、現場労働者の技能の中から基本技能を析出し、地域のGPCにおいてインストラクターを育成することにした。 三つの地域(米国ケンタッキー、タイ、イギリス)に設置したGPCでインストラクターを育成し、インストラクターが各工場において労働者に基本技能の教育を行うのである。インストラクターは生産工、保全工向けの教育と現場監督者向けの教育も行う。こうして育成された現場監督者がOJTを通して教育するのである。 第1年度目は、ポーランドとハンガリーを訪問し、現地のトヨタと関連部品メーカーを訪問した。第2年度目は、北米を訪問し、トヨタの5工場と北米のGPCを訪問した。第2年度目にはこのほか、チェコも訪問し、部品メーカーにおける技能移転の現状を知ることができた。 こうしてこれまで2年間の調査研究活動は、おおむね順調に進展していると評価できる。 自動車工場は、新製品の導入や設備の更新など絶えず変化する。当方の工場訪問の依頼と工場の設備変更の時期が重なると、訪問を許可してもらえないが、これまでのところ、そうした不運がない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の第3年度目における研究の推進方策を述べる。第1年度目は、中東欧のポーランドとハンガリーの工場を訪問した。第2年度目は、前述のように北米の工場とチェコの工場を訪問した。あわせて関連する文献を購入し文献による調査を行った。 第3年度目は、過去2年間にわたる調査研究活動を踏まえて、研究のまとめの作業を行うことにする。トヨタ自動車が、GPCを設置しインストラクターを育成して技能の国際的な移転を行っていること、その結果、移転が順調にかつ効率よく行われていることを北米と中東欧の子会社を訪問することで明らかにできた。その成果をまとめて発表することにする。 発表の方法は、論文の形で学会誌などに投稿し、そのうえでこれまでに書いた論文とともに書籍の形にする予定である。
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