本研究の目的は、改善技能の国際移転を有効に推進する方法とその意義について、トヨタ自動車の教育訓練機関であるGPC(Global Production Center)と海外工場における実態調査を通して明らかにすることである。 初年度(平成29年度)は、ポーランドのトヨタ自動車のエンジン・トランスミッション工場と当該工場に部品を供給する日系の部品メーカーを訪問した。二年度目(平成30年度)は、北米のトヨタ自動車の5つの工場を訪問した。カナダと米国ケンタッキーの乗用車工場、米国テキサスとメキシコのトラック工場そして米国アラバマのエンジン工場を訪問しインタビュー調査と工場見学を行った。三年度目は、これまでの調査研究の成果をもとに、本来の研究目的に即して資料を整理し分析作業を行った。2年にわたって欧州と北米の工場を訪問し最新の知見を得たことは、まことに貴重な経験であった。 筆者は約30年にわたって海外のトヨタ自動車の工場を訪問し、調査研究を行ってきた。北米やイギリスの主要な工場には4回、5回と訪問しており、時間的な経過を踏まえた分析が可能である。そこで、視点を広げて長期の歴史的な観点からこの2年間の調査研究の成果を生かす分析を行うことにした。 トヨタ自動車は、技能の国際移転について、2段階のプロセスをたどっている。第一段階は、海外工場の立上期(1980年代)における親工場方式である。日本の工場が親工場となって海外の工場、子会社に技能を移転するのである。第二段階は、2000年代に入り、GPCと称する技能移転の訓練機関を日本と海外3地域(米国、タイ、英国)に設置したのである。海外GPCでトレーナーを育成し、そのトレーナーが地域内の工場で従業員に技能訓練をおこなう。本年度は、この歴史的な視点を踏まえて2年間の研究の成果を生かすべく分析作業をおこなった。
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