研究課題/領域番号 |
17K04043
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
挽 文子 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (00251728)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 経理・財務部門 / 管理会計 / 経営管理 / 財務報告 / IFRS |
研究実績の概要 |
持続的に発展を遂げている企業がある一方で、経営破綻をする企業あるいは不正会計を行う企業が後を絶たない。本研究では、前者に該当する日本企業に焦点を当て、そうした企業における経理部門の組織と役割の特徴を歴史的に明らかにしようとするものである。 このような研究目的達成のために、平成31年度・令和元年度は、第1に、インタビュー調査、内部資料の閲覧と質問票の設計を行った。調査対象は「持続的に発展を遂げている企業」のデータベースに含まれる企業である。このデータベースは、平成30年度にこの研究の一環として作成したものであり、①東証一部上場企業のうち、②過去40年間にわたって連結ベースおよび個別で営業利益と純利益が継続して黒字の(1度も赤字を出していない)企業が含まれる。この中から調査に応じてくれた企業を対象とした。 第2に、優良な日本企業同士の比較から経理部門の組織と役割の特徴を明らかにすることに加えて、欧米企業との比較を行った。欧米企業の経理部門の組織と役割の変遷については、1954年から2019年までに公表された代表的な論文と著書を対象とした文献研究と平成31年度・令和元年度に行ったインタビュー調査内容に基づく。 これらの研究成果を、令和元年9月開催の日本会計研究学会全国大会統一論題において報告者として報告した。また、同年同月の日本原価計算研究学会統一論題では座長としてこれに関連するテーマ「もう一度実務に戻る」をとりあげた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質問票の設計に時間がかかり、その実施と分析には至らなかった。 欧米の先行研究では多くが企業内の事業部を質問票調査の対象にしている。事業部にコントローラー部門がおかれているためである。しかし日本企業では必ずしも事業部にコントローラーがいるわけではなく、また欧米企業と日本企業とでは、事業部の規模や意思決定権限の委譲について違いがみられる。これらのことから、わが国独自の環境を考慮する必要がある。 質問票の設計に時間がかかった理由は、第1に、会計情報を利用して経営管理を行うどの階層の経営管理者を対象とすべきか、またどの職能の経営管理者を対象にすべきかの選択に時間がかかったためである。第2に、質問項目数が多すぎると回収率が下がるため質問項目の選択に時間がかかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究、インタビュー調査と内部資料の閲覧に加えて、引き続き研究協力者の協力を仰ぎながら質問票の完成・実施・分析を実施する予定である。質問票調査については、平成30年度に作成したデータベースに含まれる企業1社か2社を対象に、イントラネット等を通じての大量調査を予定している(一つの企業に対して100名程度、対象は経理・財務部門、トップマネジメント、事業部長などの経営管理者、スタッフ部門の経営管理者)。 これらの研究をまとめて論文と著書の執筆およびテキストの改訂に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問票の設計に時間がかかり、実施と分析にはいたっていない。次年度に実施の予定である。この分析・解釈のためにインタビュー調査を行うとともに、研究協力者との研究会を予定している。これらの費用として翌年度助成金を請求した。
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