持続的に発展を遂げている企業がある一方で、経営破綻をする企業あるいは不正会計を行う企業が後を絶たない。企業が持続可能な発展を遂げるためには健全な会計が不可欠であり、企業において会計を担当する経理部門に対する研究が望まれるという問題意識のもと、4年間にわたり、文献研究とフィールドスタディを行った。 DX(デジタルトランスフォーメーション)が世界的に進展する中、日本企業はその流れに必ずしもうまく乗っているとはいえない状況のもと、多くの日本企業が経理部門の組織と機能、経理担当者の育成などに頭を抱えている。欧米においては1950年代から断続的にコントローラーの役割やCFOとその傘下の部門の役割の変化などに焦点を当てた研究の蓄積がなされてきた。一方、日本ではこうしたテーマを扱った研究が極めて少ないと言わざるを得ない。本研究の意義は、長年にわたり黒字を続けてきた企業を対象に、先行研究を踏まえたうえで、経験的研究を行い、規範的に経理部門の役割を検討した点に求められる。 本研究では、①企業の経営理念、経営哲学、組織風土と経理部の関係、②経理部門内の組織、経理部門の企業内における位置づけと事業部門との関係、③管理会計と財務報告の関係、④経営管理者による会計情報の利用、⑤経理担当者の育成の5つの観点から、優良な日本企業の実態を明らかにした。日本は世界でも稀なIFRS(国際財務報告基準)任意適用の道を選んだが、経営管理への寄与・高度化を目的にIFRSを任意適用した企業およびIFRS任意適用の予定がない企業の経理部門の実態を明らかにしたことが独創的な点といえる。 定性的データの収集にあたって、オーラルヒストリーの方法を採用した点も本研究の特徴といえる。
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