研究題目は「沖縄独立研究と琉球社会憲法の国家観――沖縄県人・県系人にみるトランスナショナリズム」だが、令和2年度の研究実績報告書で述べたように、コロナ禍で外国(本研究にとっては東アジア諸国およびハワイ)に行くことができず、理論的・文献的な研究に路線変更を余儀なくされた。さらに、現地調査も沖縄や砂川などの国内の限られた地域に限定せざるを得なくなったので、沖縄を核とする東アジアの平和的な連携にとって障害となりうる基地問題を中心に研究を進めるにした。 その成果は、別記の論文題目にある「沖縄・砂川・済州からのリージョナルな問いへ」や「砂川から考える基地・平和・共生」、さらには「東アジア共同体形成の意義と課題をめぐる考察」や「砂川・沖縄・東アジアにおける反戦平和問題」、そして最終年度2月には「暴かれた密談とその後――砂川闘争の解禁文書・新資料発見後の「新たな砂川闘争」(ただしこの公刊は2022年度4月なので、論文リストからは外した)が最終年度のものである。 そして、これまでの研究期間の総まとめとして、最終年度には次の報告書を作成した。それは、『沖縄から学ぶ社会思想とトランスナショナリズの展望―いま平和社会学の構築に向けてアジアで問うべきこと』で、内容は、第1部:沖縄の独立案と憲法案―沖縄の社会思想とトランスナショナルな志向、第2部:トランスナショナリズム論と間主観性論の理論的射程――東アジアを念頭において、第3部:日本社会学におけるトランスナショナルな視点を探る、第4部:トランスナショナル社会学とグローカル研究、第5部:東アジアからのグローカルな視線――沖縄・砂川から問う基地と平和、第6部:いま東アジアの平和に向けて考えるべきこと、付章:21世紀におけるトランスナショナル社会学研究の足跡、からなり、全体で英語論文を含め、本論12本、補章6本、付章2本から構成されている。
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