研究課題/領域番号 |
17K04162
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
石原 俊 明治学院大学, 社会学部, 教授 (00419251)
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研究分担者 |
有薗 真代 龍谷大学, 社会学部, 専任講師 (90634345)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 島嶼 / 硫黄島 / アジア太平洋戦争 / 強制疎開 / 地上戦 / 離散 / 占領 / 歴史社会学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小笠原群島・硫黄列島、伊豆諸島、奄美諸島など、日本のいわゆる南方離島の人びとが、アジア太平洋戦争末期から戦後にかけて強いられた疎開・動員と帰還・離散をめぐる諸経験に関して、比較歴史社会学的研究を行うことにある。 本年度は第1に、昨年度末に刊行した『硫黄島―国策に翻弄された130年』(中公新書)にかかわる講演・研究発表やアウトリーチ活動を幅広くおこなった。まず5月に公益財団法人小笠原協会が主催する講演会「国策に翻弄された硫黄島の130年――中公新書『硫黄島』刊行を機に」に登壇し、研究者はもとより、旧島民、一般市民、政治・行政職の聴講者を多く集めた。6月にはUCLAで開催されたThe 6th Annul Trans-Pacific Workshopにて、前記拙著にかかわる研究発表を実施し、その成果の一環として、拙著の序章の英語訳を『明治学院大学社会学部付属研究所年報』50号(3月刊)に掲載した。そのほか、『毎日新聞』『聖教新聞』『文藝春秋』『潮』などの論壇各誌・紙に硫黄列島の社会史にかかわる論考を寄稿した。 第2に調査活動に関しては、小笠原群島・硫黄列島の旧島民を対象とする調査に加えて、沖縄県内離島からの強制疎開経験者へのインタビューを進めた。また、本年度に発足した「硫黄島民3世の会」の研究会を勤務校の明治学院大学で開催するなど、島民2・3世当事者からの聞き取りを進めるとともに、かれらが歴史記憶を継承する手助けを行ってきた。 ただし、残念なことが数点あった。ひとつは硫黄列島への島民墓参が行政上の理由により本年度も再開されなかったため、墓参旅行に同行しつつインタビュー調査や参与観察調査を行うことができなかった点である。ふたつは新型コロナウィルスの感染拡大の影響もあり、2~3月に予定していた大東諸島などでの現地調査が実施できなかった点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で述べた通り、研究成果の公表については昨年度に引き続き、当初研究計画以上に大きな進捗をみた。反面、調査活動については行政上の理由および感染症拡大の影響により、当初計画より進捗が遅れることとなった。しかし後者は不可抗力によるものでもあり、また総合的にみたとき、ここまでの進捗状況は「おおむね順調」と判断して問題ないであろう。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、新型コロナウィルス感染状況によっては、調査研究活動がほぼ不可能になってしまう可能性がある。そのため、本年度は2月から3月にかけて、国立国会図書館東京本館、同関西館、京都大学各図書館、沖縄県立図書館など、その時点アクセス可能なあらゆる図書館・文書館にて関連資料を閲覧・複写するなど、本研究プロジェクトの最低限の持続性を確保する作業に追われた。 だが不幸なことに、本研究プロジェクトの主たる調査対象者は、「高齢者+離島住民」という新型コロナウィルス感染にとって最もセンシティブな人たちである。次年度のうちに当初予定していた調査成果を得るのは、おそらく難しいであろう。そのため、場合によっては研究期間の延長も検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究実績の概要」欄で述べた通り、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、2~3月に予定していた離島での現地調査は実施困難になった。代わって、本研究プロジェクトの持続性を確保するため、図書館・大学・文書館等の閉鎖を見越して、3月に東京・京都などの図書館・文書館にて、必要最低限の文献資料の閲覧・収集を行った。その旅費の処理手続きについて、次年度にずれ込んだため、若干の残額が生じた。
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