1.参加型評価の協働実践研究について A地区を対象フィールドに参加型評価を実施したこれまでの結果を踏まえ、関係者で共有された点として、第1に、計画(企画)段階とモニタリングにおいて活用する「ロジック・モデル」の作成が効果的であったことがあげられる。A地区では以前、住民・専門職・関係機関等の参加によるロジック・モデルの作成を行った。本モデルは実践の進行管理を行うのに用いていた。その後は、A地区独自の地域づくり計画策定に至ったのだが、ロジック・モデルまでは作成しなかった。そのことから、参加型評価を実践していくうえで改めてロジック・モデルの有効性を関係者で再認識した。第2に、関係者の使用用語によって微妙なニュアンスの違いをどのように調整するかである。例えばA地区では「話し合い」を実践の中核に据えているだが、ある参加者(専門職)は「協議」という用語を用いていた。しかし、多くの関係者は「話し合い」と「協議」は異なるという理解をしていることがわかった。このことから、多様な主体の参加による実践の評価を行っていくには、話された用語が指し示す意味も含めて分析し、関係者で共有していくことが重要となる。第3に、評価を行う際の「評価ファシリテーター」の重要性である。参加型評価を進行していくうえで評価アプローチを熟知したファシリテーターを研究者だけではなく、専門職あるいは住民等が担うことが可能となるような人材育成が求められる。 2.今後の課題 上記の協働実践研究での到達点から見出された課題として、第1に、関係者で評価を行うために、実践の可視化が可能となるような評価ツールの開発、第2に、関係者が語る際に使用する用語のより深い分析、第3に、評価ファシリテーターの育成方法の検討、それらの課題を踏まえた評価研究方法の深化があげられる。
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