研究課題/領域番号 |
17K04245
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
高尾 公矢 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (50167483)
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研究分担者 |
赤羽 克子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 教授 (90369398)
宇佐美 尋子 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (30581962)
佐藤 可奈 聖徳大学, 心理・福祉学部, 講師 (90595894)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 介護施設職員 / 施設介護 / 介護ストレス / 介護離職 / 介護人材確保 |
研究実績の概要 |
わが国では認知症高齢者数が増加の一途を辿っている。認知症の症状が進行すると問題行動と 呼ばれる BPSDが現れることも多く、介護職員のストレスを増大させている。そのことが介護職員の離職を引き起こす原因にもなっており、介護職員のストレス軽減が喫緊の課題となっている。 認知症ケアにおいて利用者からの介護拒否や暴力行為を経験した際、介護職員にどのような心理的ストレス反応が生じているかは未だに解明されていない。 本研究の目的は、認知症ケアにおける介護職員が受けるストレスと就労継続意思との関連を解明し、ストレス軽減のための雇用管理施策の検討並びに介護職員の離職防止策を提言することを目指すものである。 初年度(平成29年)は、介護老人福祉施設と介護老人保健施設に勤務する介護職員を対象に質問紙調査を実施し666人(回収率80%)から回答を得た。その結果、「介護サービス利用者やその家族から暴言や暴力を受けたことがあるか」という問いには、「受けたことがある」(53%)、「受けたことがない」(47%)であり、約半数以上が暴言や暴力を受けていることが明らかになった。その結果を基に質的調査、インタビュー調査を実施した(各10人、合計20人)。介護職員への暴力や暴言は施設における「入居者虐待」のニュースが報道される裏側で、高齢者による職員への暴言や暴力はほとんど取り上げられることがなかったが、施設職員は笑顔を絶やさず、優しく話しかけるその裏側で、高齢者やその家族からの暴言や暴力、そしてセクハラを受けている実態が明らかとなった。 今後は質問紙調査の解析をするとともにインタビュー調査による逐語禄を作成しKJ法を用いて分析してそれを基に施設における利用者や家族から受ける職員への暴力・暴言が職員にどのようなストレスを与えているのかを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は「介護老人福祉施設の介護職員」と「介護老人保健施設の介護職員」を対象にして質問紙調査とインタビュー調査を実施した。その結果を基に認知症の利用者やその家族の暴言・暴力が施設職員にどのようなストレスを与え、それと就労継続意との関連の解明を試みた。現在、質問紙調査の解析を進めると同時にインタビュー調査について1人の介護職員につき約60分のインタビューをテープレコーダーに記録したが、そのインタビューを1人ひとりについて逐語禄を作成して、それを基にKJ法を用いて分析する予定であり研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、認知症ケアにおける介護職員が受けるストレスと離職率との関連で、介護職員のメンタルヘルスに焦点をあてストレスと就労継続との関連について調査・分析する。そのことはストレスの予防・ 軽減への手がかりを把握するだけでなく、介護職員定着の可能性を検討することにつながる。 本研究の目的である認知症ケアにおける介護職員が受けるストレス要因に関する研究は、個人的要因(個人の特性や対処能力)と環境的要因(職務環境や職場集団の人間関係、管理体制等)の両面から検討されてきたが、介護職員のストレスと就労継続の意思との関連を検討する必要があり、その結果を踏まえた上で職員の個人的要因に応じたサポートのあり方を構築すれば、ストレスの効果的な予 防・軽減策を具体的に展開することが可能となる。 訪問介護職を対象として質問紙調査を実施する。訪問介護事業所に了解を得て調査票を郵送し、調査票に記述後に郵送によって返送してもらう方式を採る。調査票は全国8地域を選定した上で、各地域から事業所別に100名の調査票を配布することを予定しており、全国8地域で800名程度に調査票を配布する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、平成29年度にインタビューを実施後、質的調査を分析する途中で、介護職員のストレスと就労継続意思との関連を新たに検討する必要が出た。これを受け、平成30年度に質的調査結果の分析を行うために必要なコンピュータソフトを購入する予定である。 また、訪問介護事業所の介護職員を対象に質問紙調査を実施する。質問紙調査は全国8地域で800程度を配布する予定のため、印刷費及び通信費(300千円)を計上する。 調査を行うための国内旅費(200千円)を計上する。これに、学会で研究報告を行うための費用が必要である(200千円)。 調査実施に伴い資料整理のアルバイト1人を40日間雇用するための費用(304千円)が必要である。その他、複写費、会議費に40千円を計上する。
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