研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、非行少年の表情認知能力の課題を明らかにするために、研究協定を結んでいる少年院在院者を対象に表情認知検査と非行内容等の調査を実施した。昨年度とあわせて対象者は男子46名であった。対照群は昨年度とあわせて男子60名に表情認知検査を実施した。 その結果、「悲しみ」「恐怖」「嫌悪」の表情において、少年院群は対照群に比べて正答率が低いことが示された。被虐待経験、障害の有無、知的レベル、非行内容、非行初発年齢における正答率に有意な差は認められなかった。誤答傾向(ある表情を別の感情を表している表情と誤って認知する傾向)は、「悲しみ」の表情を「嫌悪」に、「恐怖」の表情を「怒り」「嫌悪」「驚き」に、「嫌悪」の表情を「悲しみ」「怒り」について、少年院群は対照群よりも多く誤答していることが示された。 次に、少年院群の中で表情認知検査の結果で下位成績であった少年に対し、表情認知訓練を実施した。訓練にあたり、新たに本人及び保護者に対し研究の趣旨を説明し、本人及び保護者の同意を得た者に訓練を実施した。訓練実施者数は現在4名である。訓練はATR顔画像データベース(株式会社ATR-Promotions制作)の表情写真のうち、表情認知検査で使用していない男女各1名の表情写真を使用した。訓練方法は、Dadds, Cauchi, Wimalaweera, Hawes, and Brennan(2012),Hubble, Bowen, Moore, and Goozen (2015),F&T表情識別訓練プログラム(障害者職業総合センター, 2000)を参考に作成した。訓練結果は現在分析中である。 また、動画による表情認知訓練方法作成のために、男女各2名のモデルを使用し、基本6表情の動画の撮影を行った。
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