研究課題/領域番号 |
17K04316
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00235152)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会系心理学 / リーダーシップ / 組織・集団 / 倫理 |
研究実績の概要 |
本研究は,(1)フォロワーから「倫理的」と判断されるリーダーの特性や行動を解明すると共に,それらの特性や行動がELS 得点を介してフォロワーの倫理性及び生産性に及ぼす影響を明らかにすること,(2)リーダーの倫理性(意思決定及び行動)を促進・抑制する要因を同定し,それらの要因がどのようなメカニズムでリーダー自身の行動を倫理的または破壊的にするのかを明らかにすること,を目的としている。平成29年度は,目的1のための組織従業員へのインタビュー調査(現在,継続中)を行うと共に,目的2に関して,勢力,地位,及びモラルアイデンティティ等の非倫理性促進・抑制効果の検討を,インターネット調査によって実施した。欧米の先行研究では,勢力感が高く,地位感(他者から尊敬されているという感覚)が低いほど非倫理的行動が促進されることが指摘されていたが,本研究では欧米の知見とは反対に,勢力感が低いほど非倫理的行動が促進されること,地位感は非倫理的行動に影響を及ぼさないことが示された。また,モラルアイデンティティは非倫理的行動と関連しなかったが,勢力感や職位の高さとは正の関連を示した。さらに,回答者の職位が高い場合は勢力感が低いほど非倫理的行動を行うが,職位が低い場合は勢力が非倫理的行動に関連しないという結果が示された。全体的に,リーダーの勢力はむしろ非倫理性を抑制する効果があることが示唆された。今後は,リーダーの勢力の機能に関する仮説を修正しつつ今後の研究を進める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度中に組織従業員に対するインタビュー調査を終え,倫理性の高いリーダーの行動リストを作成する予定であったが,当初予定していたインタビュー対象者の一部の都合が変わったため,インタビュー対象の業種の多様性を確保することができず,インタビュー調査を終えることができなかった。そのため,その行動リストを用いる調査も遅れることとなったが,その代わりに平成31年度に行う予定であったインターネット調査の一部を前倒しで実施した。結果的には遅れは最小限に留まっている。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー対象者は現在も獲得を続けており,平成30年度中にはインタビューを終えて平成29年度に実施予定であった調査を実施できる見込みである。当初予定していた平成30年度実施予定の実験室実験は,インタビュー調査の内容に依存しない部分から予定通り実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた部署単位のインターネット調査が平成30年度にずれ込んだため,その調査費用分が平成30年度分に加えられている。平成30年度中に,そのインターネット調査を行う予定である。
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