研究課題/領域番号 |
17K04353
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
鳥居 深雪 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (90449976)
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研究分担者 |
近藤 武夫 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (00379869)
式部 陽子 奈良教育大学, 特別支援教育研究センター, 特任講師 (20737431)
梅田 真理 宮城学院女子大学, 教育学部, 教授 (50529138)
小川 修史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90508459)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スティグマ / 発達障害 / 高校生 / 社会モデル / オンライントレーニング |
研究実績の概要 |
高校生に対する「障害理解教育プログラム」第一案および調査項目を検討した.事前調査として,発達障害のある大学生にインタビューし,これまでの体験や彼らの意見を調査した.インタビュー調査の結果もふまえ,回答者の基礎データ(年齢(学年)、性別など)、社会的距離、影響因と考えられる発達障害に関する知識や、これまでの障害のある人との接触体験の質などを中心に、質問項目を作成した.「障害理解教育プログラム」は,高校生に理解しやすいよう,イラストも交え,単なる知識にとどまらず,ICFの「社会モデル」の考え方も説明しながら,高校生がどのような姿勢を持つべきかを考えさせる内容とした.研究参加者の高校生の中にも、おそらくは発達障害の当事者がいることに配慮し、当事者にとってもポジティブな内容となるよう工夫した.調査項目及び,高校生向けプログラムは,すでにSurvey Monkey上にアップロードし調整済みであり,すでに調査を開始している.これまでの調査の中で,高校生の感想として,「とてもわかりやすかった」「こういったことはみんな知るべきだ」といった意見だけでなく,「自分も障害があるが最適な環境であれば差をなくすことができると再認識できた」といった声もあった.当事者からも支持を得られたことは,本研究の意義は大きいと考える.また,今後のWeb上での公開に向けて,鳥居研究室のWebを立ち上げた. さらに,データの蓄積に向けて,各地の高校へのリクルートを行っている.その過程で,プログラムの体験を教員研修として希望する高校が多く,高校生向けの「障害理解教育プログラム」の体験と調査を行うことになった.別途,教員に対する「研修プログラム」も,作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)スティグマの実態及びプログラムの効果を評価するための調査項目の検討:研究チーム全員で,調査項目及び高校生向けプログラムについて検討した.回答者の基礎データとして、国、人種、言語、年齢(学年)、性別などについて回答を得る。さらに、これまでの、発達障害のある人と共有した経験の質や、発達障害に関する知識、社会的距離など、調査項目案を作成した. (2)プログラムの作成:①高校生に対する「障害理解教育プログラム」は、高校生が身近に感じられるよう、コミックを用いて、主人公の高校生が説明するという設定にした.研究参加者の高校生の中にも、おそらくは発達障害の当事者がいることに配慮し、当事者にとってもポジティブな内容となるよう工夫した.すでに実施した生徒からは.プログラムに関して,非常に好意的な感想を得ている.当事者からも好評である.高校生向けプログラムは,良いものができている.②教員に対する「研修プログラム」は、案を作成し検討中である. (3)調査協力高校のリクルート・依頼:千葉県,兵庫県,神戸市,東北各県の高校に調査協力を依頼し,すでにいくつかの内諾を得た.各地の高校に対する調査協力のリクルートを行う中で,質問項目やプログラムの内容について知りたい,という要望が高校側から出された.そこで,要望があった高校には,出向いて職員研究として体験していただき質疑応答をしたうえで,生徒への実施をしていただくこととなった.それらの学校では,教員と生徒両方のデータが得られることから,より詳細な検討の可能性が期待できる. (4)調査項目及び,高校生向けプログラムは,すでにSurvey Monkey上にアップロードし調整済みである. (5)Web上での公開に向けて,鳥居研究室のWebを立ち上げ,すでに運用している.
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今後の研究の推進方策 |
(1)プログラムの実施とスティグマの実態調査:実際に高等学校に研究の目的・方法について説明する中で,教員自身も十分には知識がないことと,生徒にプログラムを実施するにあたっての不安などが見られた.そこで,生徒用のプログラムに,教員研修として取り組んでいただき,質問に応じることで,指導者側の不安を軽減するように計画を修正した.高校にうかがって,調査とプログラムを教員に体験してもらう予定である.データは,6月いっぱいをめどに,できるだけ多く収集したい.7~8月に,データの解析を行い,研究チームで結果について検討する予定である.(2)研究代表者の鳥居は本年9月~12月,UC Davis の研究所で研修予定である.滞在中に,プログラムの英語版への翻訳については,研究協力者と話し合って作成する予定である.また,現地の高校にも視察に行き,高校教育の中で発達障害についてどのように理解を深めているのか調査したいと考えている.北京語版への翻訳は依頼している.(3)論文作成:これまでのインタビュー結果や中間報告について,現在論文を執筆中であり,学会誌に投稿する予定である.9月以降,本研究の全体的な結果について整理し,国際学会(American Educational Research Association, International Society for Autism Research)発表に向けて準備する.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に論文作成支援ソフトウェアEndNote X8を購入したが,事務手続き上,執行が今年度にずれ込んでしまった.そのため,会計上剰余金として表示されている. 今年度の予算については,計画通りの執行を予定している.
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