研究実績の概要 |
本研究は、ディメンジョン的評価を含むパーソナリティ障害のDSM-5代替モデルの妥当性と有用性を実証的に検証し、精神疾患診断のディメンジョン的モデルの臨床的有用性と限界を明らかにすることを目的としている。 初年度に日本語版DSM-5パーソナリティ調査票(PID- 5)を開発し、次年度は、その短縮版(25項目)の信頼性及び妥当性の検証を大学生を対象に行った。最終年度は、長尺版(220項目)の信頼性及び妥当性を検証するために一般人口集団を対象としたWEB調査を行なった。短縮版の際と同様に、基準関連妥当性を検討するために、同時にパーソナリティ5因子モデルに基づくNEO Five Factor Inventory (NEO-FFI; 60項目)、及びDSM-5パーソナリティ障害のための構造化面接人格質問票(SCID-5-PD; 61項目)も実施した。対象は、948名(男:479名, 女:469名)の一般人口集団であり、年齢は18~65歳まで広くほぼ均等に分布していた。その地域分布は、概ね人口分布に従って全国に分布しており、わが国の一般人口の代表的集団と言えた。以上のデータをもとに確認的因子分析を行い、日本語版PID-5の妥当性を概ね認めたが、その因子構造にはなお検討の余地を残した。 一方、肥前精神医療センターにおいて、急性期病棟に入院する患者についてDSM診断を補完するケース・フォーミュレーションの実践とその効果を調査した結果、病因論的理解の記述について、医師と心理職では相違があり、前者は生物学的な説明に偏る傾向があるのに対して、後者は心理学的な理解を好む傾向があることが認められたが、いずれも臨床現場における多職種間のコミュニケーションにおいて有用性があると考えられた。 以上の成果については、心理アセスメントにおけるDSM診断の効用と限界として論文発表を行った。
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