研究課題/領域番号 |
17K04624
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
藤田 美佳 奈良教育大学, 次世代教員養成センター, 研究部員 (90449364)
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研究分担者 |
今井 純子 順天堂大学, 国際教養学部, 助教 (00458506)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 第二言語識字教育 / 移住女性 / 移民・難民 / エンパワメント / 言語習得 / 社会参加 / 比較研究 / 隠れたカリキュラム |
研究実績の概要 |
平成30年3月9日に韓国国会議員会館で行われた、韓国移住女性人権センター・全国移住女性シェルター協議会による「移住女性の“#MeToo”行動」で得られた調査結果を踏まえ、藤田が5月2日~7日韓国大邱市移住女性人権センターおよび同シェルターを訪問し、移住女性のセイフティネットとしての言語習得と社会参加に関する調査を行なった。これまでソウル市にある移住女性人権センター(本部)を中心に調査を行なって来たため、各支部の調査は十分でなかった。そこで、保守的な地域であり、移住女性労働者の課題について取組み実績のある大邱市の実践を把握した。そして、移住女性が主体となった「#MeToo行動」の実態と、これまでの韓国内各地における移住女性人権センターの性暴力被害女性支援の実践、報告書を分析し、移住女性の社会参与と連帯に関する成果と課題を整理した。これらの研究成果を踏まえ、日本社会教育学会第65回研究大会(名桜大学)において、「移住女性の“#MeToo”行動と社会参与―韓国移住女性人権センターにおける実践を踏まえて」を発表した。また一橋大学大学院言語社会研究科韓国学研究センターと韓国淑明女子大学人文科学研究所トランスナショナル韓国女性史研究チーム共同主催シンポジウム「移住と女性-移住女性たちが語る国家・地域・世界」(一橋大学)に招聘され、「移住女性の言語習得と社会参与-日韓でのアクション・リサーチを踏まえて」を発表した。 一方、李善姫(東北大学)科研基盤C 15K01908「移住女性の「新移民コミュニティ」活動と社会的資本に関する国際比較研究」の福島県郡山市「多文化共生シンポジウム」、上智大学「韓国の「多文化政策」と移住女性支援の取り組みから学ぶシンポジウム」において、研究調査先の移住女性人権センター代表が日本に招聘されて講演を行った際には、連携・協力し、研究者としての社会的な責任を果たした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
韓国調査に関しては、平成29年度学会発表2件、平成30年度学会発表1件、国際シンポジウムでの招聘発表1件と順調に推移している。最終年度である平成31(令和元)年度には、学会発表2件、論文投稿2件の予定で取り組んでおり、順調に推移している。しかしながら、米国調査に関しては、初年度に実施できず、平成30年度2月に実施する予定で、前倒し予算を申請し配分されたが、研究代表:藤田、分担:今井とも本務多忙により、平成31年度(令和元年度)に現地調査を延期した。初年度・2年目に実施する予定であった米国調査が延期となっているため、当初の研究計画に遅れが生じている。そのため、上記の進捗状況とした。現時点では、入手した英語文献の分析を行い、現地調査に向けた準備をしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成31(令和元)年度は、延期となっている米国での海外調査を実施し、米国において課題提起型第二言語識字教育(Problem-posing ESL:English as a second Language / Literacy)を提唱したマサチューセッツ大学ボストン校のElsa Auerbach教授およびニューメキシコ大学アルバカーキ校のNina Wallerstein教授へのインタビューとフィールド調査を予定している。その際、これまでの研究成果である、韓国の移住女性に対する韓国語教育における隠れたカリキュラムについての考察と実践的な展開の分析結果を提示し、米国の移民・難民に対する第二言語識字教育(英語)におけるAuerbach教授・Wallerstein教授の共同研究の隠れたカリキュラムの問題との比較研究に関して、意見交換を行う予定である。 学会発表は、異文化間教育学会(6月)、日本社会教育学会(9月)の2回と論文投稿は、日本社会教育学会(11月)、異文化間教育学会(3月)の2本を予定している。 韓国調査に関しては、当初予想以上に調査が進展している状況にある。というのも、移住女性たちを取り巻く性暴力、労働問題などの課題が顕在化し、そうした課題に対応した実践が急進的に展開しているためである。現代的な課題についての研究に取り組んでいるため、こうした展開に即して、調査に取り組む予定である。劇的な動きがある状況を活用し、移住女性に関わる国内外の研究者との共同や研究交流をすることにも繋がるため、学会発表や論文等の研究成果を基に、今後、共同研究へと発展させることを視野に入れて研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年2月に予定していた米国調査(ニューメキシコ州、マサチューセッツ州)を平成31(令和元)年度に延期したことにより、研究代表者・分担者ともに旅費の残が生じた。次年度に旅費として使用予定である。
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