研究課題/領域番号 |
17K04624
|
研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
藤田 美佳 奈良教育大学, 次世代教員養成センター, 研究部員 (90449364)
|
研究分担者 |
今井 純子 順天堂大学, 国際教養学部, 准教授 (00458506)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 移民 / 難民 / 移住女性 / 批判的教育学 / 識字教育 / 第二言語教育 / リテラシー / 人権 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パウロ・フレイレの識字教育理論を基盤とした移民・難民に対する第二言語識字教育について、米日韓の実践と教材の国際比較研究を行い、フレイレの教育理論に依拠した第二言語識字教育の意義と課題を整理し、普及の可能性を解明することにある。 2017年度より、韓国移住女性人権センターでのフィールド調査を中心に研究を進めてきた。具体的には、1)移住女性の韓国語習得と社会参与、主体意識の形成を目指した韓国語教材の分析とその制作過程に関するインタビュー調査、2)移住女性を対象に、リーダーや移住女性をサポートする各分野の専門家を養成するプログラム、3)DV:Domestic Violenceや、夫からの不当な離婚訴訟などへの対処と、移住女性に関する社会的なイシューの醸成等について、批判的教育学および同センターの活動に影響を与えているフェミニズム神学を活用し、考察してきた。 2020および2021年度は、COVID-19の影響により、予定していた米国でのフィールド調査の実施が不可能となった。 そこで2021年度は、1)2020年度に異文化間教育学会第41回大会(国際教養大学・オンライン開催)で発表した「移住女性の社会参与と連帯―韓国移住女性人権センターにおける実践を踏まえて」を論文化するために、移住女性人権センターのwebサイトで公表された情報や、SNSで発信された情報などオンラインで得られる情報とDV等に関わる裁判の報告書の再分析を行ない、フレイレの識字教育で重視されている批判意識が、主体的な行動として実践的に展開されている実態を明らかにした。韓国については、zoom等のオンラインツールを活用することで共同研究者へのフォローインタビュー等を実施することができたが、面識のない米国の研究者たちとのコンタクトは容易ではなかったため、2022年度の現地調査に向けて教師用指導書を分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の影響により、2019年度に予定していた米国でのフィールド調査を2020年度に延長したが、2021年度においても引き続き渡航が不可能であったため、実施することができなかった。そのため、米国の研究に関して大幅な遅れが生じた。そこで、韓国の実践についての論文化について取り組んだ。また米国に関しては、新たに入手した教師用指導書等の分析を行い、米国での現地調査に備えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究を3年延長したが、COVID-19の影響により、米国でのフィールド調査の目処が立たないため、共同研究者との対面およびオンラインでの会議を行い、現時点で得られている韓国のデータのみでの論文化に取り組んでいる。 本研究の目的は、米日韓3カ国の国際比較研究であり、メインとなる米国の調査を実施しなければ、研究の主題を達成することが困難となる。日本政府の海外渡航の制限の緩和の方向が見通せる状況になったため、年度内に訪米調査を実施し、研究の成果をまとめる予定である。万が一、COVID-19に関する状況が悪化した場合には、収集した資料による比較分析によって、限定的な成果をまとめることを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、米国フィールド調査(ニューメキシコ州、マサチューセッツ州)の実施が不可能であっため、渡航を延期した。そのため、研究代表者・研究分担者とも旅費に残額が生じた。 COVID-19による渡航制限が緩和される方向性が示されたため、2022年度内に米国フィールド調査を実施する。具体的には、ニューメキシコ州およびマサチューセッツ州における移民・難民支援施設の訪問調査と各フィールドに関わる研究者へのインタビュー調査を予定している。また最終報告書の作成にあたり、韓国でのフォロー調査として、韓国移住女性人権センターでのインタビューを行う。
|