本研究では,就職を希望する高校生の就職先について意思決定後の自己評価に焦点を当て,離職意思に影響を与える要因を同定することを目的とした。 1年目は,,就職を希望する高校生を対象に,就職先に対する自己評価を形成するプロセスを明らかにすることを目的とした(N=31)。就職が内定した者を対象に半構造化面接を行った。その結果,就職先に対する自己評価の観点が〔納得〕と〔上手な妥協〕であること、また,その形成プロセスの核となる動きは内的基準と外的基準の相互作用である〔熟考〕であることが明らかになった。 2年目は,〔納得〕〔上手な妥協〕〔熟考〕の構造を明らかにすることを目的とした(N=1836)。「キャリア選択に対する納得感」は,「意義」と「見通し」,「キャリア選択に対する熟考」は「熟考」,「キャリア選択に対する上手な妥協」は「わりきり」と「覚悟」の構造であった。また,3年目の調査に備え,高校3年時の6月,8月,11月,2月に調査を行った。 3年目は,就職1年目(10月)の離職意思と高校3年時の納得感等の諸要因との関係を明らかにすることを目的とした。就職決定時期によって納得感が変わることが予想されるため,9月から10月決定群(N=202)と11月以降決定群(N=39)に分類した。群ごとに離職意思を目的変数,〔納得〕〔上手な妥協〕〔熟考〕の各因子を独立変数とする重回帰分析を行った。その結果,離職意思に対して,9月から10月決定群では,6月と8月には「意義」の負の有意傾向のパスが見られ,11月は「熟考」の負の有意なパスが見られた。11月以降決定群では,6月は「わりきり」,2月は「意義」の負の有意なパスが見られ,2月は「見通し」の負の有意なパスが見られた。 以上のように,高校時の進路指導の結果の一つと考えられる納得感のうちの「意義」や「熟考」が離職意思を低減することが明らかになった。
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