研究課題/領域番号 |
17K04914
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
白澤 麻弓 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 准教授 (00389719)
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研究分担者 |
磯田 恭子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (10531999)
萩原 彩子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30455943)
中島 亜紀子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 助教 (30589007)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聴覚障害学生 / 高等教育機関 / 合理的配慮 / スタンダード / 実態調査 |
研究実績の概要 |
聴覚障害学生に対する合理的配慮の提供実態について、全国の4年制大学759校を対象とした調査を行い、その結果を分析した。また、昨年度実施した海外調査の分析を行うとともに、より詳細な調査に向けて文献収集・整理を行った。
このうち、国内調査では、特に現在または過去4年間に何らかの合理的配慮を必要とする聴覚障害学生を受け入れた経験のなかったり、経験の浅い大学に焦点を当てて、その意識を分析した。この結果、「座席の配慮」など、大学側にとっての負担が少ない配慮については、特に問題なく対応できると考えられていたが、それ以外の支援手段では、「わからない」との回答が最も多く、支援可能性について十分に議論されていない様子が見て取れた。特に、「ビデオ字幕」「遠隔情報保障」など、機材や技術が必要とされる支援では、求められる技術の内容自体がわからない様子で、検討すること事態に困難性を感じている様子が伝わってきた。その反面、「音声認識技術」などでは、「ダウンロード済みなので大丈夫」など、必ずしも現場の実感とは異なる記述も見受けられた。逆に、「手書きノートテイク」など、近年、多くの大学で実施され、知見も広がってきている支援手段については、比較的実施に対するハードルも低いことが明らかとなり、まずは各種支援手段について十分な知識を広げていくことが、合理的配慮におけるスタンダード引き上げに寄与することが示唆された。
一方、海外調査では、高いスタンダードに基づき手話通訳等の支援を行っているロチェスター工科大学の実態を分析し、情報保障の質の高さを支える学内体制の実態について論文として発表することができた。これらの体制は、いずれも日本の大学には存在しないもので、日本の大学における合理的配慮提供実態引き上げに必要な要素の一つであることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、全国の大学を対象にWebフォームを利用した質問紙調査の実施を予定していたが、質問項目の特性から、オンラインでの対応が難しく、郵送による調査に変更した。このため、予算ならびに時間的制約の関係上、当初予定していたヒアリング調査については、令和2年度に実施する形とした。しかし、結果的には質問紙調査によって、よりきめ細かな大学の実情をつかむことができ、研究としては充実したデータを得られる形となったと考えている。 また、昨今の事情により、ヒアリング調査やアクションリサーチの実施には、ハードルが生じている状況にあるが、オンライン等を活用する方向で、実施方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度に実施した全国調査の結果を基に、(1)現時点でどのような合理的配慮が提供されているか、(2)特に議論になる場面があるとしたらそれはどのような理由に基づくものか、(3)どのような条件が整えば合理的配慮の提供が可能になるかを大学の設置形態や支援経験別に明らかにし、現時点におけるスタンダードと合理的配慮の提供可否を決定づける要因について分析する。 これらの結果をもとに、今後、対象校を絞り込んだヒアリング調査を実施するとともに、実際のアクションリサーチへと続けたい。ただし、アクションリサーチの実施のためには、現在の新型コロナウィルスの影響がある程度収束し、支援担当者が障害学生支援の質的向上に向けて取り組める環境が必要であるため、大学を取り巻く状況を見ながら、研究の方向性について検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
郵便物の後納手続きを行っており、実際に必要となる費用が明確でなかったため、予算として確保しておいた金額と、実際の使用額の間に差額が生じたため。残額は、次年度分の郵便料金に充当する。
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