研究課題/領域番号 |
17K04944
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀代子 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (20734370)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 聴覚障害 / ライフステージ / 人工内耳 / 障害認識 |
研究実績の概要 |
聴覚障害児者の社会的自立に関わる支援アプローチは長期のスパンで対応し、検討していくことが必要である。 近年、新生児聴覚スクリーニング検査の普及により、早期に難聴が診断され、療育が開始されている。そして、聴力が高度である場合には、治療法としては人工内耳手術が一般的となっている。また、手術効果が評価されるにつれて、術年齢の低年齢化、両耳装用の増加の傾向がある。しかし、小児人工内耳の普及は2000年の保険適応後からであり、それ以前に幼児期を過ごした聴覚障害児は、人工内耳との接点が極限られたままに成長していることが少なくない。また、学童期以降に人工内耳手術を検討する先天性難聴例については、術後のことばの聴取・発話明瞭度の改善が十分でないことも少なくなく、その報告はほとんどない。しかしながら、聴覚障害児の生育過程においては、人工内耳についてもさまざまな対応が必要となり、ライフステージごとに本人の意識やニーズが異なることが示唆されている。 そこで、本研究では人工内耳装用児者における高校期から大学、就労への移行に着目して、社会的自立のためにライフステージごとの支援ニーズを明確化し、支援モデルを構築することを目的とする。 研究期間は、平成29~31年度の3年間としている。29年度は、当初の予定どおり中学校期以降に手術を行った先天性難聴例を対象に質問紙、半構造化面接法によって、これまでの生活においてバリアを抽出した。また、新たに検討として加えた内容として人工内耳装用児者と装用閾値が同等と考えられる成人した中等度難聴例にもライフステージにおける支援の在り方を検討した。 本研究により人工内耳装用児者の乳幼児期からの保護者支援について適切な指導ポイントの明確化や支援モデルの構築に貢献するものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の進捗状況は、当初予定としていた計画1のうち①中学校期以降に人工内耳手術例において、質問紙や半構造化面接を中心に聞こえ・コミュニケーション・生活の観点からバリア抽出し、求められる支援について検討した。さらに、当初予定していなかった検討として、人工内耳装用者と同等の補聴閾値が考えられる中等度難聴者においても同様な視点から検討することができた。 平成30年度以降は幼児期に手術を行い中学校期以降になった人工内耳例(当事者)に対して、これまでのライフステージの中でバリアと必要とされる支援について質問紙を利用して調査する予定である。また、同時に、保護者についても検討することにしており、当事者とセットで行うことが可能であり、時間的に短期で行うことが可能と推測できる。以上からおおむね順調に進展していると考えられるが、アンケートの協力が少ないなど、予定どおり進行しない場合は研究協力者の協力を得て、対象を増やすことによって対応する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
小児人工内耳手術は2000年から保険適応となったこともあり、現在、そのころに手術した例が青年期になったところである。これまでに、本邦では長期的に追跡した研究は少なく、幼少時の手術例における社会的自立の支援について検証したものはほとんどない。 本研究は人工内耳装用児者のライフステージごとの支援ニーズを明確化し、さらに保護者が子どもの社会的自立に必要と考える支援を明らかにすることで、支援の在り方を構築できるものと考える。また、本研究によってライフステージごとの移行段階で教育側と医療側の連携のあり方を提供できると考えられる。 本研究による検討によって得られた結果に基づき、高校から大学・就労への移行に着目してして、人工内耳装用児者の社会的自立のための裸婦ステージごとの支援ニーズを明確化し、支援モデルを構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に開催できなかった研修会やワークショップ開催のための会場費や講師依頼費などに充当する予定である。 また、調査研究の旅費に充てる予定である。
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