本研究の目的は,離散力学系の各種性質を,相空間の幾何構造への作用を通じて明らかにすることである.具体的な成果としては,ピカール群への抽象的な作用から,それを実現する双有理写像を構成する一般的な公式を発見し,可積分構造を保った非自励化の手法を確立した.また,高次元の力学系に対してもその作用が適切に表現される相空間(初期値空間)を構成する手法を確立した.可積分ではない高次元力学系に対しても,代数的に安定な多様体を作る方法を見出した.さらにQuispel-Roberts-Thompson写像と呼ばれる楕円曲面の自己同型写像に対して,自然な解の構成法を提案した.
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