数理ファイナンスへの応用を念頭に後退確率微分方程式と非線形確率積分の研究を行った。本研究は非線形確率積分によって市場流動性を考慮した資産運用収益をモデル化するという動機と、後退確率微分方程式を経由して非線形確率積分を伊藤積分で表現できるという着想から始まった。非線形条件付き期待値を効用関数とするベルトラン型競争市場におけるヘッジ問題を研究し、最も単純な設定においてはヘッジ戦略がバーガース方程式の解によって記述され、ヘッジ対象ペイオフの形状がバーガース方程式が表現する衝撃波として伝播し、資産価格の暴落を引き起こすメカニズムを明らかにした。
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