本年度は2019年3月から収得したビームデータの解析を行った。データ解析は検出器のエネルギーと時間校正から行った。エネルギー校正には検出器の応答を特定できるデータが必要であり、メンテナンスなどのために加速器が停止している間に宇宙線を用いて収得したデータを使用した。宇宙線が検出器を通過した軌跡は検出器を囲む他検出器から求められ、各MPPCから読み出す信号を予測できる。詳細な校正係数は同じ条件で選び出したミュレーション計算結果と比較しで求めた。検出器の設置前に測定して光電子数を考慮したシミュレーション計算結果はデータをよく再現し、エネルギー校正作業が正しく行ったことが確認できた。時間校正も同宇宙線データを用いて行った。一個の宇宙線が作り出す信号を4個のMPPCが共有することと、隣接する2個の検出器を同時に突き抜ける条件を利用して、全てのMPPCの時間の原点を一致させた。 ビームデータの解析では、取得したビームデータとK中間子崩壊のシミュレーション計算結果の比較を行った。生成されたK中間子の運動量やフラックスは今までの測定結果を使用した。ビームデータには注目するK中間子崩壊以外の原因(取得イベントの時間範囲で崩壊する別のK中間子など)による信号が一緒に記録されている。そのため、2次粒子生成標的で生成された粒子だけに依存するデータを別途に取得し、シミュレーション計算結果に付け加えることで実測データと同じ条件で比較できる。荷電粒子検出器はシミュレーション結果と実測データがよく一致するエネルギー分布を持ち、要求された性能が達成できたことを確認した。 本研究で設置された荷電粒子検出器はK中間子のpi+ pi- pi0崩壊を排除することを目的とする。ビームデータ解析でpi+ pi- pi0崩壊の特徴を持つイベントが荷電粒子検出器により効率よく除去されていることか確認でき、本来の目的を達成した。
|