雁木は、今和次郎(1912)以来「雪の積もったときでも安全に歩けるように庇を廊下のように」したものと認識されてきた。本研究により、雁木は積雪時の歩行路に留まらず、住人による屋根雪処理を雪の橇ミチやトンネルの形成につなげ、防災や春季の搬出へもつなぐ拠り所となっていたとわかった。 各戸が雁木を設置することにより、戸別の雪処理が可能となり、梯子と木鋤により一人で屋根雪を通りへ堆雪できた。雁木が軒を接することにより、堆雪位置が揃い、橇ミチが形成された。住人は雁木下への防火水槽の設置を了承し、積雪時の火災時にも消防ポンプを接続できた。屋根雪を多面的・循環的に有効活用するエコロジカルなシステムといえる。
|