近代化の当初から日本住宅の伝統性は封建的あるいは非合理的であるとの改良論を根拠に見直しを求められてきたが、いまだに履き替えの慣習は維持されながら、和室は継承されている。しかし、生活の西洋化が普及するなかで、例えば1922年に提案された家族共用空間を最重視する居間中心型住宅が、近年にようやく急増を示し、相対的に和室の優先性が大幅に低下しているのであるが、わが国の住まい方の転用性・柔軟性・多様性に基づく住生活様式は、和室の存在によりその自由度が保証されてきたのであると評価することができる。本研究は、消失が危惧される和室について、現代における居住者の住要求と存在基盤を解明するものである。
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