【令和4年度の研究成果】 令和4年度は矩形開口開先を有する厚さ10mmのアルミニウム合金厚板の突合せ継手に対して異種材料を含めた角棒状肉盛材を送給する方法で,主軸頭を傾斜可能な汎用立フライス盤を用いて摩擦攪拌接合した.単パスでのI開先摩擦攪拌接合と比較して,多層多パス肉盛摩擦攪拌接合は接合中の最高到達温度が著しく低くなり,これに起因して無欠陥で接合が達成できる接合条件範囲が狭くなる.一方,得られた継手の引張強さや破断伸びは単パス接合の場合とほぼ同じ性能が得られ,内部に欠陥が形成された継手でも欠陥を破断経路に含まない破断形態を呈することを明らかにした. 【研究期間全体の成果】 本研究は,摩擦攪拌接合の普及を妨げる要因の一つとなっている,接合装置に求められる高い剛性を緩和するため,溶融溶接で実施されている開口開先に対する多層肉盛充填を摩擦攪拌接合でも可能とする技術の開発を進めた. 当初は肉盛材供給口を設けたステーショナリーショルダー型ツールを用いて接合を試みたが,肉盛材と継手母材の接合が不十分となることが判明し,肉盛材の予熱や供給位置・位相を種々変化させて解決を試みたが,望ましい成果は得られなかった.このため,ツールを一般的な形状に戻すとともに,開先の開口形状をツールに適合するよう,矩形開口開先とした.また,肉盛材は角棒状としてプローブとの接触面積が大きくなるように工夫した. これにより,開口開先が緻密に充填された継手が得られるようになった.ステーショナリーショルダー型ツールでは母材の接合部近傍をショルダーで十分に摩擦加熱できないことが当初の接合不良の原因であると考えられる.多層多パス接合を摩擦攪拌接合専用機ではなく,汎用工作機械でも接合を達成できることを実証した.
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