• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

高エネルギー粒子輸送へのバルクプラズマ乱流の影響

研究課題

研究課題/領域番号 17K06991
研究機関京都大学

研究代表者

石澤 明宏  京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30390636)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワードプラズマ閉じ込め / 非線形 / 乱流 / MHD / 燃焼プラズマ / 数値シミュレーション / ジャイロ運動論 / プラズマ・核融合
研究実績の概要

磁場閉じ込め核燃焼プラズマの維持には、燃焼によって生じた高エネルギー粒子とそれによって加熱されるバルクプラズマそれぞれの良好な閉じ込めが必要である。そのため、これ等の閉じ込めを低下させる高エネルギー粒子駆動のマクロな電磁流体(MHD)不安定性およびバルクプラズマのミクロな乱流による輸送を理解する必要がある。その理解のために、大域的電磁ジャイロ運動論シミュレーションコードの開発を行った。本研究で開発された大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードは、国内には例がなく世界的にもまれであり、従来のドリフト波乱流に加えMHD不安定性の第一原理計算を可能にする。このコードにより世界最先端である大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションを行い、高エネルギー粒子駆動MHD不安定性と乱流の相互作用による高エネルギー粒子および背景プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価することが本研究の目的である。
本年度は、計画どおり、電磁的大域ジャイロシミュレーションコードの開発を完了した。従来の数値シミュレーションでは困難であったMHD不安定性と乱流の相互作用による高エネルギー粒子および背景プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価することを、この大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードは可能にする。この点が研究の大きな特徴である。このコードを用いていくつかのMHD不安定性およびドリフト波不安定性の線形解析および非線形シミュレーションを行った。特に、有限ベータにおける運動論的バルーニングモードの非線形飽和機構を明らかにし、その飽和機構を電磁的イオン温度勾配不安定性(ITGモード)と比較した。その結果を論文にまとめ、海外雑誌に投稿した。さらに、磁化プラズマにおける揺動の多スケール間非線形相互作用機構をレビューした論文を発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

核融合炉における燃焼プラズマでは、核融合反応で生じる高エネルギー粒子がMHD不安定性および乱流輸送に影響を与える。この影響は本研究で開発した電磁的ジャイロ運動論シミュレーションによって評価可能になり、高エネルギー粒子とMHD不安定性および乱流の相互作用機構についての理解を進める。
核融合反応で生じる高エネルギー粒子によって駆動されるマクロなMHD不安定性およびバルクプラズマのミクロな乱流によって生じる輸送を同時に評価するために、静電的大域的ジャイロ運動論シミュレーションコードGKNETにたいして、アンペール則を解いて磁場揺動が計算可能なように拡張する開発を行い、完了した。このコードの開発の結果、大域的電磁ジャイロ運動論に基づく電磁的ドリフト乱流および高エネルギー粒子駆動巨視的MHD不安定性の非線形発展の解析を可能にした。
研究の第一段階として、運動論的バルーニングモード(KBM)の非線形シミュレーションを行った。運動論的バルーニングモードは、高ベータプラズマにおいて乱流輸送を引き起こすと考えられているが、その非線形飽和機構は未だ明らかになっておらず、現在も研究がつづけられている。この運動論的バルーニングモードの非線形飽和機構を理解するために、簡単のため、単純な円形断面および大アスペクト比プラズマを考えた。そして、このプラズマにおける運動論的バルーニングモード(KBM)の非線形飽和過程を初めて示し、定常的な乱流状態を得た。そして、この結果を論文にまとめ、海外雑誌に投稿した。

今後の研究の推進方策

今後は、開発した電磁的大域ジャイロシミュレーションコードを用いて電磁的ドリフト波不安定性(電磁的イオン温度勾配不安定性、電磁的捕捉電子モード、運動論的バルーニングモード、微視的テアリングモード)の非線形シミュレーションを行う。そして、それぞれによって駆動される乱流による熱および粒子の輸送を評価するとともに大域的なプラズマ閉じ込め悪化機構の理解を進める。さらに、高エネルギー粒子駆動MHD不安定性であるトロイダルアルフェン固有モード(TAE)の非線形シミュレーションを行う。これらのシミュレーションにより、それぞれの不安定性の非線形飽和機構を理解する。その後、さらに、上記不安定性によって駆動される乱流が高エネルギー粒子駆動MHD不安定性と相互作用することによって生じる高エネルギー粒子とバルクプラズマの閉じ込め悪化を同時に評価する。これら一連の大規模数値シミュレーションにより燃焼プラズマにおける高エネルギー粒子駆動MHD不安定性と乱流の相互作用による高エネルギー粒子および背景プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価する目的を達成する予定である。そして、この相互作用では多スケール間の非線形相互作用が重要になることが予想され、核融合炉における燃焼プラズマの多スケール間の非線形相互作用機構の理解をもたらすことが期待できる。

次年度使用額が生じた理由

論文の掲載が年度末になり、その論文の掲載料が直接経費の残高を少し超えたため、他の資金から論文の掲載料を支払った。その結果、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、別の論文の掲載料またはコンピュータの購入に当てる予定である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Texas at Austin(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Texas at Austin
  • [雑誌論文] Multi-scale interactions between turbulence and magnetic islands and parity mixture - a review2019

    • 著者名/発表者名
      Ishizawa A、Kishimoto Y、Nakamura Y
    • 雑誌名

      Plasma Physics and Controlled Fusion

      巻: 61 ページ: 054006~054006

    • DOI

      10.1088/1361-6587/ab06a8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modeling of turbulent particle and heat transport in helical plasmas based on gyrokinetic analysis2019

    • 著者名/発表者名
      Toda S.、Nakata M.、Nunami M.、Ishizawa A.、Watanabe T.-H.、Sugama H.
    • 雑誌名

      Physics of Plasmas

      巻: 26 ページ: 012510~012510

    • DOI

      10.1063/1.5058720

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Simulation studies on temperature profile stiffness in ITG turbulent transport of helical plasmas for flux-matching technique2018

    • 著者名/発表者名
      Nunami Masanori、Nakata Motoki、Toda Shinichiro、Ishizawa Akihiro、Kanno Ryutaro、Sugama Hideo
    • 雑誌名

      Physics of Plasmas

      巻: 25 ページ: 082504~082504

    • DOI

      10.1063/1.5036564

    • 査読あり
  • [学会発表] ゼロ磁気シア領域を持つトカマクプラズマにおけるMHD不安定性の大域的ジャイロ運動論解析2019

    • 著者名/発表者名
      石田祐太郎, 石澤明宏, 今寺賢志, 岸本泰明, 中村祐司
    • 学会等名
      日本物理学会第74回年次大会
  • [学会発表] 微視的乱流のベータ値依存性へのローカルシアの影響2018

    • 著者名/発表者名
      浦野大介, 石澤明宏, 中村祐司, 渡邉智彦
    • 学会等名
      第35回 プラズマ・核融合学会 年会
  • [学会発表] ゼロ磁気シア領域を持つトカマクプラズマにおけるMHD不安定性の大域的ジャイロ運動論解析2018

    • 著者名/発表者名
      石田祐太郎, 石澤明宏, 中村祐司, 今寺賢志, 岸本泰明
    • 学会等名
      第35回 プラズマ・核融合学会 年会
  • [学会発表] Multi-scale interaction and parity mixture between turbulence and magnetic islands2018

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Ishizawa
    • 学会等名
      2nd Asia-Pacific Conference on Plasma Physics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The study of multi-scale interaction and parity in turbulence/MHD system based on global flux driven simulation2018

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Ishizawa
    • 学会等名
      THEORY OF FUSION PLASMAS
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Electromagnetic global gyrokinetic simulation for the analysis of MHD instabilities and turbulence2018

    • 著者名/発表者名
      A. Ishizawa, K. Imadera, Y. Nakamura, Y. Kishimoto
    • 学会等名
      The 45th European Physical Society Conference on Plasma Physics
    • 国際学会
  • [学会発表] 電磁的不安定性の大域的ジャイロ運動論解析2018

    • 著者名/発表者名
      石澤明宏, 今寺賢志, 中村祐司, 岸本泰明
    • 学会等名
      第12回核融合エネルギー連合講演会
  • [備考] 石澤明宏のホームページ

    • URL

      http://www.center.iae.kyoto-u.ac.jp/kondok/ishizawa/index.html

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi