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2019 年度 実施状況報告書

高エネルギー粒子輸送へのバルクプラズマ乱流の影響

研究課題

研究課題/領域番号 17K06991
研究機関京都大学

研究代表者

石澤 明宏  京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30390636)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワードプラズマ閉じ込め / 非線形 / 乱流 / MHD / 燃焼プラズマ / 数値シミュレーション / ジャイロ運動論 / プラズマ・核融合
研究実績の概要

磁場閉じ込め型プラズマ装置において燃焼を維持するためには、燃焼によって生じた高エネルギー粒子とそれによって加熱される燃料であるバルクプラズマそれぞれの良好な閉じ込めが必要である。一方、高エネルギー粒子駆動のマクロな電磁流体(MHD)不安定性は高エネルギー粒子の閉じ込めを劣化させ、ミクロスケールを持つ乱流による輸送はバルクプラズマの閉じ込めを低下させる。したがって、これ等の電磁流体(MHD)不安定性および乱流による閉じ込め悪化機構を理解する必要がある。本研究では、世界最先端である大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションを行う。そして、高エネルギー粒子駆動MHD不安定性と乱流の相互作用による高エネルギー粒子および背景プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価することが本研究の目的である。
今年度は、本研究課題の主目的である高エネルギー粒子駆動MHD不安定性とドリフト波不安定性によって駆動される乱流(ドリフト波乱流)の相互作用の数値シミュレーションに着手した。高エネルギー粒子駆動MHDはマクロスケールの不安定性であり、ドリフト波不安定性はミクロスケールで不安定になる。したがって、高エネルギー粒子駆動MHDとドリフト波乱流の相互作用は非線形マルチスケール相互作用となる。この相互作用を、数値シミュレーションを用いて理解する。また、有限β(有限圧力)プラズマにおける運動論的バルーニングモードの非線形飽和機構を明らかにし、その結果を海外雑誌Physics of Plasmasに発表した。さらに、乱流輸送のベータ値依存性は有限ベータ効果による磁場配位変化によって大きく異なることを示し、ITERのハイブリッド放電のようなプラズマは乱流輸送のベータ依存性の観点から望ましいことを明らかにした。この結果を海外雑誌Physical Review Lettersに発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

核融合炉における燃焼プラズマでは、乱流によって生じる熱及び粒子の輸送に加えて核融合反応で生じる高エネルギー粒子がMHD不安定性を起こし、プラズマ閉じ込めに影響を与える。本研究では、この影響を理解するために大域的電磁ジャイロ運動論シミュレーションコードを開発した。新たに開発した大域的電磁的ジャイロ運動論シミュレーションコードは、国内には例がなく世界的にもまれな第一原理計算を可能にする。このシミュレーションコードを用いて、乱流と高エネルギー粒子駆動MHD不安定性の相互作用の機構を理解するとともに、そのプラズマ閉じ込めへの影響を評価する。
今年度は、開発したコードを用いて高エネルギー粒子駆動MHD不安定性であるトロイダルアルフェンモード(TAE)の解析を行った。そして、さらに本研究課題の主目的である乱流と高エネルギー粒子駆動MHD不安定性の相互作用の数値シミュレーションに着手した。この大域的電磁ジャイロ運動論に基づく電磁的ドリフト乱流および高エネルギー粒子駆動巨視的MHD不安定性の非線形発展の数値シミュレーションにより、核融合反応で生じる高エネルギー粒子によって駆動されるマクロなMHD不安定性とバルクプラズマのミクロな乱流の相互作用によって生じるプラズマの輸送を評価する。
また、運動論的バルーニングモード(KBM)の非線形シミュレーションを行い、高ベータプラズマにおいて乱流輸送を引き起こす運動論的バルーニングモード(KBM)の非線形飽和機構を示した。この結果を論文にまとめ、海外雑誌Physics of Plasmasに発表した。さらに、乱流による輸送が磁場配位への有限ベータ効果によって大きく異なることを示し、海外雑誌Physical Review Lettersに発表した。
以上のことから、研究課題の達成度は順調であると考える。

今後の研究の推進方策

本研究課題で開発した大域的電磁ジャイロ運動論シミュレーションコードを用いて、本研究課題の主目的である電磁的ドリフト波不安定性に駆動された乱流と高エネルギー粒子駆動MHD不安定性であるトロイダルアルフェン固有モード(TAE)の非線形相互作用の数値シミュレーションを進める。そして、乱流とMHD不安定性のマルチスケール相互作用によって生じる熱および粒子の輸送を評価するとともに大域的なプラズマ閉じ込め悪化機構の理解を進める。その結果を、2020年開催のIAEA核融合会議で発表申請中である。さらに、このシミュレーションにより、乱流とMHD不安定性がマルチスケール相互作用しながら非線形飽和する機構を理解する。これらの大規模数値シミュレーションにより燃焼プラズマにおける高エネルギー粒子駆動MHD不安定性と乱流の相互作用による高エネルギー粒子および背景プラズマの熱・粒子輸送を同時に評価する目的を達成する予定である。

次年度使用額が生じた理由

参加予定であった会議に参加できなかった。その結果、次年度使用額が発生した。次年度使用額は、コンピュータの購入に当てる予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] University of Texas at Austin(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Texas at Austin
  • [雑誌論文] Persistence of Ion Temperature Gradient Turbulent Transport at Finite Normalized Pressure2019

    • 著者名/発表者名
      Ishizawa A.、Urano D.、Nakamura Y.、Maeyama S.、Watanabe T.-H.
    • 雑誌名

      Physical Review Letters

      巻: 123 ページ: 025003

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.123.025003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Global gyrokinetic simulation of turbulence driven by kinetic ballooning mode2019

    • 著者名/発表者名
      Ishizawa A.、Imadera K.、Nakamura Y.、Kishimoto Y.
    • 雑誌名

      Physics of Plasmas

      巻: 26 ページ: 082301~082301

    • DOI

      10.1063/1.5100308

    • 査読あり
  • [学会発表] シンポジウム トロイダルプラズマにおける揺らぎの大域特性と分布形成:MHDによる磁場構造が揺動および輸送へ与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      石澤 明宏
    • 学会等名
      第36回 プラズマ・核融合学会 年会
  • [学会発表] 運動論的バルーニングモードの非線形ジャイロ運動論シミュレーション2019

    • 著者名/発表者名
      石澤明宏, 今寺賢志, 中村祐司, 岸本泰明
    • 学会等名
      日本物理学会 2019年秋季大会
  • [学会発表] Interaction between MHD and turbulence and helical core2019

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Ishizawa
    • 学会等名
      5th UNIST- Kyoto Univ. Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 反転磁気シアトカマクにおける運動論的MHD不安定性の非線形飽和機構2019

    • 著者名/発表者名
      石田祐太郎, 石澤明宏, 今寺賢志, 岸本泰明, 中村祐司
    • 学会等名
      第36回 プラズマ・核融合学会 年会
  • [学会発表] 負磁気シアトカマクにおける運動論的MHD不安定性の非線形飽和機構2019

    • 著者名/発表者名
      石田祐太郎, 石澤明宏, 今寺賢志, 岸本泰明, 中村祐司
    • 学会等名
      日本物理学会 2019年秋季大会
  • [備考] 石澤明宏のホームページ

    • URL

      http://www.em-energy.energy.kyoto-u.ac.jp/ishizawa/

  • [備考] 京都大学電磁エネルギー学分野

    • URL

      http://www.em-energy.energy.kyoto-u.ac.jp/

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公開日: 2021-01-27  

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