研究課題
動物が音声コミュニケーションを取るためには、相手の発する声を処理し理解する聴覚機能が必要である。本研究ではマウス脳を用いて、大脳聴覚野がどのように音声コミュニケーションに関わっているのかを明らかにすることを目的としている。声は求愛などに用いられ情動を醸し出す音である。一般的な理解では、大脳聴覚野は音を処理し、情動は扁桃体等で処理されると考えられる。従って、聴覚野と扁桃体間の結合を全て明らかにする必要がある。聴覚野を構成する亜領域に順行性トレーサーを注入すると、二次聴覚野が特異的に扁桃体外側核に投射を送っていることが分かった。次に、聴覚野亜領域に逆行性トレーサーを注注すると、二次聴覚野が特異的に扁桃体外側核から投射を受けていることが分かった。共焦点顕微鏡を用いてさらに詳細な構造を観察すると、二次聴覚野から扁桃体外側核に投射する興奮性軸索は、扁桃体外側核から二次聴覚野に投射する興奮性ニューロンの細胞体に直接シナプスすることが分かった。二次聴覚野以外の領域では、一次聴覚野において多少の扁桃体との結合がみられたが、前聴覚野と内背側領域は扁桃体と全く結合が無かった。このことは、聴覚野亜領域と扁桃体は均一に結合を持っているのではなく、二次聴覚野が扁桃体と作用するハブとなっていることを示唆する。さらに、この二次聴覚野から始まり二次聴覚野に終わるループは、扁桃体だけでなく、様々な深部脳神経核との間で形成されていることも分かった。二次聴覚野は、様々な脳情報を音に連関する座である可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
マウス大脳聴覚野と情動の座である扁桃体との間の精緻な結合様式を網羅的に行うことが出来、さらに共焦点顕微鏡を用いて、シナプスレベルの解析も行うことが出来た。この知見は、聴覚野が声に伴う情動を処理するメカニズムを考察する上で基盤となるデータであり、さらなる発展が見込まれる。
声に対する聴覚野活動の詳細な生理解析を行っていく。オスマウスの求愛歌や仔の声を複数聞かせてマクロイメージングを行い、複数の聴覚領域・高次視覚野・島皮質から神経活動を網羅的に観察する。
残額は発生したものの小額であり、着実に予算を執行出来たと考えている。残額は次年度の消耗品費として使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 9件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
PLoS One
巻: 13 ページ: e0193017
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http://www.bri.niigata-u.ac.jp/~physio/
http://1qaz2wsx3edc.webcrow.jp/TsukanoH.html