研究実績の概要 |
我々はこれまでに、視床皮質投射では投射形成時にスパイクタイミング依存性可塑性(STDP)の中でも長期増強(LTP)だけを示すSTDP(all-LTP STDP)が起こること、さらに4層-2/3層投射形成時でもやはりall-LTP STDPが起こることを報告してきた。また、視床皮質投射形成時には、all-LTP STDPの結果、過剰な投射が形成されるが、この過剰投射の刈り込みにはLTDだけのSTDP(all-LTD STDP)にスイッチし、カンナビノイド受容体の活性化による物である事も示してきた。同様に、4層-2/3層投射においても生後13-15日ごろにall-LTP STDPから、LTP,LTDの両方をしめすHebbian STDPにスイッチし、これが臨界期可塑性の開始の実体であろうことを示唆してきた(Journal of Neuroscience, 2012, 2016, 2019)。本研究では、内因性カンナビノイドの実体の同定、カンナビノイド作動薬による軸索刈り込みの効果を明らかにして、STDP,カンナビノイド、回路形成、臨界期開始の4つのキーワードがどのように関与しているかを更に明らかにすることを目的としている。 本年度は、年度当初に発表した上記4つのキーワードがどのように関与しているかのモデル(Journal of Neuroscience, 2019)に基づいて、これまでのデータの解析を進めてきたところ、我々の提唱するモデルを支持する結果を得られた。これをさらに裏付けるべき実験を新たに開始した。また、実験結果の一部を論文にしている最中である。これは、視床皮質投射と4層-2/3層投射において、その形成時に互いに異なるSTDPが、協調することを報告したが(Eur JN,2016)、同様のSTDPの協調がL4-L2/3,L2/3投射形成時も起こるというものである。
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