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2018 年度 実施状況報告書

iPS細胞を用いたGFPT1先天性筋無力症の病態解析および治療研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K07094
研究機関名古屋大学

研究代表者

伊藤 美佳子  名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (60444402)

研究分担者 大河原 美静  名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80589606)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードGFPT1 / 先天性筋無力症行群
研究実績の概要

先天性筋無力症候群(congenital myasthenic syndromes, CMS)は神経筋接合部(neuro muscular junction, NMJ)に発現するタンパクをコードする遺伝子の先天的分子欠損症により神経筋伝達障害が起こる疾患群である。NMJ で機能する分子のうちCMS の原因として知られている分子は、骨格筋アセチルコリンレセプター(AChR)、Collagen Q、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)、Rapsin、MuSK、LRP4、GFPT1、DOK7,Agrin 等が挙げられる。CMS の原因分子の一つに、タンパクや脂質の糖化酵素であるGFPT1(Glutamine:Fructose-6-Phosphate Transaminase 1)の変異があり、肢帯型の筋力低下が特徴である。GFPT1は広範囲に発現するタンパクであり、なぜNMJに限定してCMS症状を起こすのかは不明である。興味深いことに骨格筋ではスプライシングされるexon9の54塩基が含まれるGFPT1-L isoformが形成され、酵素活性が減少する。しかし、なぜ骨格筋でこのGFPT1-L isoformが高発現であるか不明である。
本研究ではGFPT1-L の骨格筋での役割を明らかにするため、exon9をスキップさせたモデルマウスGfpt1-L-/-を作製し、表現型解析を行った。運動試験の結果は、Gfpt1-L-/-マウスはコントロールと差がなかった。骨格筋におけるExon 9の欠失が神経筋接合部の形成にどのような影響があるかを調べるため、免疫組織染色を行い、神経末端とアセチルコリンクラスターを可視化したがコントロールと同様であり、exon 9のスキッピングは神経筋接合部の形成に影響を与えないと思われる。今後は、神経筋接合部形成や筋肉代謝におけるGfpt1-Lの役割を、神経筋接合部の表現型やUDP-GlcNAcの量から、さらに詳しく調査する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

GFPT1-L の骨格筋での役割を明らかにするため、exon9をスキップさせたモデルマウスの作製を試みた。これらのトランスジェニックマウスはCRSPR/Cas システムを用いてGfpt1遺伝子のexon 9のdeletionを作製し、交配によりホモのGfpt1-L-/-マウスを作製した。骨格筋および心筋においてexon9のスキッピングがGfpt1-L-/-マウスで確認できた。これらのマウスの成長に伴う体重変化はコントロールと差がなかった。6ヶ月齢時点の回転ホイールテスト、ロタロッドテストによる運動能テストにおいても、コントロールと差がなかったことから、運動能においてはGfpt1-L-/-は正常と思われる。骨格筋におけるExon 9の欠失が神経筋接合部の形成にどのような影響があるかを調べるため、神経末端をラベルするsynaptophysin抗体による免疫組織染色とアセチルコリンクラスターを可視化するα- bungarotoxinによる染色を行った結果、exon 9のスキッピングは神経筋接合部の形成に影響を与えないことが分かった。
変異マウスを用いたin vivo実験は、マウスを準備に時間がかかることから昨年度から作製の準備に取り掛かっていたため、今年度はスムーズに実験をすることができた。

今後の研究の推進方策

本研究では前年度にGFPT1遺伝子のc.252A>T と c.722^723insG のヘテロ変異を持つ患者を同定している。c.252A>T (pE84D)変異はexon4のskipするsplicing mutationであった。c.722^723insGはalternatively spliced (muscle and heart specific) exon 9内の変異であり、reading frameを変えてpremature stop codonをexon10内に導く。今後、患者変異を有するGFPT1のノックインマウスを作製し、運動試験・行動量試験などの表現型の解析や、NMJ特異的に発現している分子の変化を検出し、患者変異GFPT1において、異常を起こした分子メカニズムをさらに詳細に解析する。また、UDP-GlcNAcの量から、神経筋接合部形成や筋肉代謝におけるGfpt1-Lの役割をさらに詳しく調査する。
in vitro研究においては、この患者由来のiPS細胞を使用し、GFPT1-CMSの分子メカニズムの解明を試みる。この患者GFPT1変異の表現型を解析するため、NMJで特異的に発現しているacetylcholine receptor (AChR), MuSK, LRP4, collagen Q, agrin, dystroglycanなどの細胞外と細胞膜結合タンパクのglycosylationレベルを解析する予定である。また、筋分化させたiMbsにおいてAChR のクラスター形成能やMuSKのリン酸化レベルを検出する。さらに、治療戦略として、この変異の表現型を回復させる薬剤の選別や、アンチセンスオリゴを用いた治療法についても検討する。

次年度使用額が生じた理由

本年度ノックインマウスを外注で作製する予定であったが、本大学の動物実験施設での作製トライアルが始まり、予定より安価に作製が進んだため、未使用額が生じた。次年度は新たな患者変異を有したノックインマウスの作製費、飼育費、解析費、細胞実験における、試薬類、キット類が必要になり、これらの費用に充てる。また、学会での発表や情報収集のための参加費・旅費が必要である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Differential effects of spinal motor neuron-derived and skeletal muscle-derived Rspo2 on acetylcholine receptor clustering at the neuromuscular junction2018

    • 著者名/発表者名
      Li Jin、Ito Mikako、Ohkawara Bisei、Masuda Akio、Ohno Kinji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-018-31949-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Loss of Sfpq Causes Long-Gene Transcriptopathy in the Brain2018

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi Akihide、Iida Kei、Tsubota Toshiaki、Hosokawa Motoyasu、Denawa Masatsugu、Brown J.B.、Ninomiya Kensuke、Ito Mikako、Kimura Hiroshi、Abe Takaya、Kiyonari Hiroshi、Ohno Kinji、Hagiwara Masatoshi
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 23 ページ: 1326~1341

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2018.03.141

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular hydrogen upregulates heat shock response and collagen biosynthesis, and downregulates cell cycles: meta-analyses of gene expression profiles2018

    • 著者名/発表者名
      Nishiwaki Hiroshi、Ito Mikako、Negishi Shuto、Sobue Sayaka、Ichihara Masatoshi、Ohno Kinji
    • 雑誌名

      Free Radical Research

      巻: 52 ページ: 434~445

    • DOI

      10.1080/10715762.2018.1439166

    • 査読あり
  • [学会発表] パーキンソン病患者における腸内細菌叢の変動と水素産生量の推測2018

    • 著者名/発表者名
      伊藤美佳子 浜口知成 鈴木杏 平山正昭 大野欽司
    • 学会等名
      第41回分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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