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2018 年度 実施状況報告書

成熟mRNA再スプライシングの癌細胞生物学的悪性化に対する広範な影響の解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K07182
研究機関藤田医科大学

研究代表者

亀山 俊樹  藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (60298544)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードスプライシング異常 / 成熟mRNA再スプライシング / がん抑制遺伝子 / RNA結合因子 / EJC
研究実績の概要

mRNA前駆体スプライシングは厳密かつ正確に制御されているが、その破綻は細胞機能に異常をきたし、実際にがんを含む多くの疾患の原因となっている。我々は、スプライシングが完了した成熟mRNAが、がん細胞特異的に再びスプライシングされてしまうがん細胞特異的『mRNA再スプライシング現象』を、TSG101 mRNAを用いて証明してきた。このTSG101 mRNAの再スプライシング産物であるTSG101delta154-1054タンパク質はTSG101の安定化に働き、がん細胞の異常増殖、腫瘍の増殖、さらに転移能に関与していることが台湾のグループとの共同研究によって明らかにした。
このmRNA再スプライシング現象は多種多様ながんで広範に観察される一般的現象である。それ故、潜在的に多くのmRNA上で起こり、がんにおける大規模なトランスクリプトームの破綻を導いていると推測される。当然、正常細胞にはこのような過剰スプライシングが起こらないよう制御するメカニズムが備わっているに違いない。この様な仮説の基に昨年度にsiRNAライブラリーのスクリーニングを行った結果、がん抑制効果を持つ事が知られているRNA結合因子RBM4aがmRNA再スプライシングを抑制していることを見いだした。
また、mRNA再スプライシング現象はp53シグナルによって制御されることがよく知られており、本年度はp53によって制御される因子の探索をおこなった。MCF-7細胞にMDM2阻害剤を処置した時の遺伝子発現変動をマイクロアレイによって網羅的に行い、p53シグナルに影響を受ける遺伝子候補(48遺伝子)を選別した。次に48候補遺伝子のsiRNAによるノックダウン実験を行い、EJCのコア因子であるeIF4A3がRBM4a以上にmRNA再スプライシング抑制効果を持つことを見いだした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

mRNA再スプライシング現象はp53シグナルによって制御されることがよく知られており、本年度はp53によって制御される因子の探索をおこなった。MCF-7細胞にMDM2阻害剤を処置した時の遺伝子発現変動をマイクロアレイによって網羅的に行い、p53シグナルに影響を受ける遺伝子候補(48遺伝子)を選別した。次に48候補遺伝子のsiRNAによるノックダウン実験を行い、EJC(Exon Junction Complex:エクソン・ジャンクション複合体)のコア因子であるeIF4A3がRBM4a以上に強力なmRNA再スプライシング抑制効果を持つことを見いだした。他のEJC因子の効果を解析したところ、やはりEJCコア因子であるMagohとY14が強いmRNA再スプライシング抑制効果を持っていた。
EJCはスプライシング後のmRNAに結合し多くの機能を持つ事が知られる。しかしながら、mRNA再スプライシング制御に関しては、ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)や輸送、スプライシング制御など既知の機能に依存せずまったく新しい機能により制御される事を示唆する結果を得た。
さらに、eIF4A3ノックダウンによる遺伝子発現変化をRNA-seq解析により網羅的に行った。ウィーン天然資源大学応用遺伝学・細胞生物学科M.Kalyna研究室に依頼しデータ解析を行った結果、非常に多数のエキシトロン・スプライシングが抑制されていることが明らかとなり、がんにおけるトランスクリプトーム変化に多大な影響を与えることが示された。エキシトロンとはエクソン内に存在するイントロンであり、産物の類似性や細胞がん化で増える等の共通性から、mRNA再スプライシングと同じ機構により生じる可能性が考えられ、共同研究を進めていたが、その仮説も正しいことが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

昨年度及び本年度の研究により、我々はRBM4a及びEJCコア因子(eIF4A3, Magoh, Y14)という複数のRNA結合蛋白質が成熟mRNA再スプライシング抑制因子として機能していることを発見した。
RBM4aはリン酸化によって制御を受ける。リン酸化型RBM4aは全くmRNA再スプライシングを抑制しない。一方、脱リン酸化型RBM4aのmRNA再スプライシング抑制能は野生型と比較し非常に昂進していることが明らかとなった。現在、リン酸化の変化によるRBM4aタンパク質の安定性およびTSG101 (pre-)mRNAへの結合能変化を調べ、RBM4aのmRNA再スプライシング抑制の分子機構の詳細を解析しているところである。
また、eIF4A3ノックダウンにより数百種類のエキシトロン・スプライシングに異常が生じることが明らかとなったが、その中には細胞がん化・悪性化とも直接関わる遺伝子が複数含まれていた。そのような候補遺伝子に関し、エキシトロン領域を含む産物と含まないスプライス・バリアント産物をそれぞれ細胞に強制発現させ細胞増殖や転移能に差が生じるか解析を進める。それにより、mRNA再スプライシングが、エキシトロン・スプライシング・バリアントを介して、細胞がん化及び悪性転化に重要な役割を担っていることを示す事が出来るものと期待している。

次年度使用額が生じた理由

メーカー国内在庫が無かった物品があり、その納品が年度を超えて5月になってしまったため。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ウィーン天然資源大学応用遺伝学・細胞生物学科/Viennna Biocenter Core Facilities(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      ウィーン天然資源大学応用遺伝学・細胞生物学科/Viennna Biocenter Core Facilities
  • [国際共同研究] Centre for Genomic Regulation(スペイン)

    • 国名
      スペイン
    • 外国機関名
      Centre for Genomic Regulation
  • [雑誌論文] Cancer-Specifically Re-Spliced TSG101 mRNA Promotes Invasion and Metastasis of Nasopharyngeal Carcinoma2019

    • 著者名/発表者名
      Chua Huey-Huey、Kameyama Toshiki、Mayeda Akila、Yeh Te-Huei
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 773~773

    • DOI

      doi:10.3390/ijms20030773

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] シスプラチン抵抗性ヒト膀胱癌細胞株の樹立と網羅的遺伝子発現解析2018

    • 著者名/発表者名
      飴本 剛之介、亀山 俊樹、日下 守、前田 明、白木 良一
    • 雑誌名

      藤田学園医学会誌

      巻: 42 ページ: 37 - 40

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Rearrangement of VPS13B, a causative gene of Cohen syndrome, in a case of RUNX1?RUNX1T1 leukemia with t(8;12;21)2018

    • 著者名/発表者名
      Abe Akihiro、Yamamoto Yukiya、Katsumi Akira、Okamoto Akinao、Tokuda Masutaka、Inaguma Yoko、Yamamoto Kiyoko、Yanada Masamitsu、Kanie Tadaharu、Tomita Akihiro、Akatsuka Yoshiki、Okamoto Masataka、Kameyama Toshiki、Mayeda Akila、Emi Nobuhiko
    • 雑誌名

      International Journal of Hematology

      巻: 108 ページ: 208~212

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s12185-017-2387-x

    • 査読あり
  • [学会発表] Cancer specific aberrant mRNA re-splicing and its repressors: What are the splicing termination mechanisms destroyed in cancer cells?2019

    • 著者名/発表者名
      Toshiki Kameyama
    • 学会等名
      Invited Seminar at University of Natural Resources and Life Sciences, Vienna (BOKU), Department of Applied Genetics and Cell Biology (DAGZ)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] EJCががん特異的な成熟mRNA再スプライシングを抑制する:スプライシング正常化にはたらく新たなEJCの役割2018

    • 著者名/発表者名
      大谷勇太、亀山俊樹、前田明
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] Identification of Tumor Suppressor RBM4a as a Repressor of Cancer-Specific Mature mRNA Re-splicing.2018

    • 著者名/発表者名
      亀山俊樹
    • 学会等名
      第77回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] がん抑制因子RBM4aはがん細胞特異的成熟mRNA再スプライシングを抑制する2018

    • 著者名/発表者名
      亀山俊樹、福村和宏、井上邦夫、廣瀬哲郎、前田明
    • 学会等名
      第20回日本RNA学会年会
  • [備考] 藤田医科大学 総合医科学研究所 遺伝子発現機構学研究部門

    • URL

      http://www.fujita-hu.ac.jp/~mayeda/

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公開日: 2019-12-27  

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