研究課題
我々はsushi-ichi レトロトランスポゾン由来の哺乳類特異的なインプリント遺伝子(片親性性発現遺伝子)PEG10、PEG11 を同定し、KO マウスの解析より、Peg10、Peg11が哺乳類の胎生の特徴である胎盤の機能に関わることを証明した。さらに、Peg10、Peg11 に相同性のある遺伝子の探索からさらに9つの哺乳類特異的な遺伝子を同定し、そのうちSirh7/Ldoc1 も胎盤の内分泌調節に関わること解明した。これらの11個の遺伝子をSirh family genesと呼んでいるが、3つは胎盤という観点から哺乳類の特徴に寄与する遺伝子であった。では残りの9個の遺伝子はどのような点で哺乳類に寄与しているのだろうか。ヒトゲノムにはLTR レトロトランスポゾンに由来するdomesticated gene(家畜化遺伝子;ゲノムに入ってからのちに遺伝子として使われるようになったもの)が約30 個存在する。我々が同定したSIRH familyの11個と、gypsey 12_DR レトロトランスポゾンに由来する19 個のPNMA familyで、PNMA 遺伝子の多くは脳で発現しており、脳での機能が予想されている。本研究対象のSIRH11、SIRH3/LDOC1 (以下SIRH3)、SIRH8/RGAG4(以下SIRH8)も脳での発現を特徴とし、Sirh11 は脳内のノルアドレナリン量制御に関わることを報告した。Sirh3 KO、Sirh8 KO も行動異常が見られ、脳機能という点で哺乳類に寄与している可能性が高い。当該年度はSirh3のノックインマウス CVの解析を徹底して行い、脳での発現部位や細胞種の詳細に加えて発現時期のピークが明確になった。またSirh3が発現している細胞を培養し、その遺伝子発現パターンについて解析を行い、新たな知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
平成31年度は繁殖できているラインの都合で、研究計画のSIRH3-GFP(CV)、SIRH11-GFP(NV)の解析を中心に行った。① Sirh3 ノックインマウスCV(Sirh3のC末にVenusをつないだもの)を用いて、胎仔期からAdultの脳の発現部位の解析を進め、Sirh3が発現している細胞の種類について30年度に集中して解析を行ったNV(Sirh3のC末にVenusをつないだもの)の結果をコンファームできた。さらにSirh3 CVによって、発現時期のピークが特定された(Irie et.al 論文投稿中)② Sirh3が発現している細胞が特定されたため、WTとSirh3 KOマウスから初代培養を行い、RNAseqにより遺伝子発現パターンの違いを同定した。③ SIRH11/ZCCHC16 のN 末にGFP をつないだノックインマウスSirh11 NVを作製できたので、脳でのタンパク質の発現部位を同定を行った。また、SIRH11のC末にGFP をつないだノックインマウスSirh11 CVも生まれており、今後Sirh11 NVでの解析結果をコンファームする。以上、①②をまとめて、Sirh3については論文投稿中、Sirh11についてはSirh11 NVの結果を追加して論文作成にを行う。
データは一応取り終わっているが、論文の掲載に向けて、リバイスで要求があれば追加の実験を実施する。
論文投稿中であり、論文掲載費用およびリバイズ用の実験が必要となったときの生命科学統合支援センター利用費のため、翌年度分として請求を行った、
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Evolution, Origin of Life, Concepts and Methods
巻: Chapter 15 ページ: 317-333