研究課題
ウイルス由来と考えられる哺乳類特異的遺伝子Sirh3/Rtl6は、ウイルスのGag遺伝子部分を共通にもつ11個の遺伝子群(我々はSirh遺伝子群と呼んでいる)のうちのひとつである。我々は同じ遺伝子群のPeg10、Peg11/Rtl1、Sirh7の3遺伝子は哺乳類の胎生に必須である胎盤の形成・機能維持・妊娠に関わるホルモン量のコントロールなどに重要であることを解明し、論文で報告している。哺乳類になって獲得した新しい遺伝子がほ哺乳類の特徴に関わっているという具体例を示すことができたと考えている。Sirh3は胎盤の形成・機能には無関係であったが、脳で発現しヒストンの次に相当するレベルの種間での高い保存性を考えると重要な機能があることは推察できた。しかし、長らく機能が解明できず苦労していたが、タンパク質としての機能を解明するためにSirh3遺伝子の後ろに蛍光タンパク質のVenus遺伝子をつないだノックインマウスを作製し、蛍光タンパク質をタグとして発現・機能部位を探った。Venusタンパク質の波形を分離して画像解析が行える共焦点レーザー顕微鏡によってやっとその発現場所が脳内のミクログリア細胞であることを証明できた。しかし、ミクログリア細胞で合成され細粒・顆粒状に分泌されいるSirh3タンパク質の機能はなかなかわからなかった。最終的に細菌の細胞膜の一部であるLPS(リポポリサッカライド)を脳内に投与するとSirh3タンパク質はLPSと結合して凝集し、LPSの蔓延を防ぐことを解明できた。これはウイルス由来の遺伝子が脳における細菌の感染防御(自然免疫)に関わることを示した世界で初めての例である。またSirh3/Rtl6遺伝子の高度な保存性の意味も明らにできたと考えている。
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Developmennt
巻: 149 (18): dev200976. ページ: ー
10.1242/dev.200976
http://mammalian-specific-genes.med.u-tokai.ac.jp/