本研究では,細胞質タンパク質の分解制御にのみ関わると考えられてきたオートファジー機構が核内において遺伝子発現制御を介した細胞の老化やガンの発生に密接に関与していることを示した。更に興味深いことに,ヒト感染症疾患の原因となるアデノウイルスの侵入は,ウイルスタンパクがこの分子機構を撹乱させることで自らの増殖と細胞の状態をコントロールしている可能性があり,この分子機構がウイルスなど異物排除機構の制御に極めて重要なことを裏付けている。本成果は未だ多くが解明されていないガンの発生制御機構やウイルスの感染防御機構を明らかにする上で極めて重要な証拠となるものである。
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