研究課題
yki mRNAの3’UTRを用いて生化学的に精製し質量分析機により同定した13種の候補因子に関して、ショウジョウバエの培養細胞を用いて、yki mRNAとの関係性を解析した。候補遺伝子13種のノックダウンによってもyki mRNAの量は変化せず、細胞内局在に影響を与える遺伝子を4種同定した。これらは全て、ノックダウンによりyki mRNAのP-body局在が消失することから、P-bodyにおける翻訳抑制において機能することが予想された。しかし、予想に反し、このうちの2つのノックダウン細胞では、Ykiタンパク質量の有意な増加が検出された。この理由は、現在のところ明らかになっていない。残りの2つの候補遺伝子のノックダウンのyki mRNAの翻訳における役割に関しては、現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度に計画していたyki 3’UTR結合候補因子13種の解析を進めた。ショウジョウバエの培養細胞であるS2-DRSC細胞において候補遺伝子をノックダウンし、リアルタイムPCRにより、それぞれの候補遺伝子のmRNAを定量、ノックダウンの効率を調べた。候補因子の残存mRNA量は、内在mRNAと比較し2.3-40%であった。その際のyki mRNAの量、細胞内局在を、それぞれリアルタイムPCR、in situハイブリダイゼーションにより調べた。その結果、yki mRNA量は全てのノックダウン細胞で、コントロールと比較し有意な差が見られなかったが、細胞内局在は、cheerio、Pyruvate carboxylase、Leucyl-tRNA synthetase、Splicing factor 3b subunit 1の4種の候補遺伝子のノックダウンで、P-body局在と思われるドット状のシグナルが有意に減少した。更に、ノックダウン細胞におけるYkiタンパク質の量をウェスタンブロッティング法にて調べた。現在までに、Pyruvate carboxylase、Leucyl-tRNA synthetaseのノックダウンにおいて、Ykiタンパク質量に減少が見られている。これは、Pyruvate carboxylaseやLeucyl-tRNA synthetaseがyki mRNAの翻訳を促進しているとの結果を示唆しており、予想とは異なる結果であった。P-bodyで翻訳抑制されているmRNAは、細胞内の環境により、再び翻訳が再開されることもある。そのため、翻訳を正に制御する因子もP-bodyでmRNAと複合体を形成していることが報告されており、Pyruvate carboxylaseやLeucyl-tRNA synthetaseはそのような翻訳の再開時に必要な因子なのかもしれない。
平成31年度に予定していた通り、これまでの研究を継続して進めて行く。yki mRNA 3’ UTR結合候補因子をノックダウンし、その細胞におけるYkiタンパク質量をウェスタンブロッティング法により解析する。また、ノックダウンによりyki mRNAの細胞内局在やYkiタンパク質量に影響を与えた候補因子に関しては、RNA免疫沈降法によりyki mRNAへの結合能を調べる。更に、これらの候補因子に関しては、RNAi系統や突然変異系統を用い、それぞれの発現低下や欠損によって、yki mRNAを過剰発現させたショウジョウバエ系統との交配により、遺伝学的相互作用がみられるかを調べる。ここでポジティブな結果が得られた場合、in vivoにおいて候補遺伝子とyki mRNAの翻訳の関係の詳細を調べる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件)
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