研究課題/領域番号 |
17K07949
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新里 宙也 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70524726)
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研究分担者 |
鈴木 豪 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 西海区水産研究所, 主任研究員 (30533319)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | サンゴ / 環境DNA |
研究実績の概要 |
サンゴ礁は地球上で最も生物多様性豊かな場所の一つである。しかし地球規模の環境変動や地域レベルでの影響を受けて、サンゴ礁の状況は刻々と深刻化しており、そのきめ細かいモニタリングは重要である。そこで海水中に存在するサンゴと褐虫藻のDNA(環境DNA)に注目し、海水を汲むだけでサンゴの検出を可能にする、簡単かつ精細なサンゴ礁生態系の新たなモニタリング手法の開発を目指す。 一般的にサンゴのミトコンドリアゲノムはDNA配列の変異が極めて少なく、種判別を行うことは難しい。そのため複数のミドリイシサンゴの核の全ゲノムを比較し、種間で変異が大きく、種ごとにDNA配列が異なる核ゲノム上の遺伝子を複数特定した。ミドリイシサンゴ種間で遺伝子配列を比較し、特に変異が激しい部位を増幅するPCRプライマーを設計した。PCR増幅の鋳型にゲノムDNAをして遺伝子全長を増幅した場合、イントロン配列の存在によりPCR増幅産物が巨大になりすぎで使用困難になる可能性が浮上した。そのため、種ごとに変異が激しい遺伝子のイントロン配列についても種間比較に含めることにより、遺伝子マーカーの候補を追加した。これらプライマーの有効性を検証するため、実際のミドリイシサンゴのDNAサンプルを使用し、PCRによる検証を行っている。 日本に生息しているサンゴ種の完全長ミトコンドリアゲノムを網羅的に解読し、環境DNA解析に使用するためのデータベースの構築をするために、これまでに石西礁湖を中心とした海域から採集したサンプルについて、次世代シーケンサーによるDNA解読を行った。DNAサンプルからのミトコンドリアDNAの濃縮については、実験操作の煩雑さが増すことから行わなかったので、核ゲノムとミトコンドリアゲノムが混在するDNA配列データから、ミトコンドリアゲノムのみをアッセンブルする解析方法の確立を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミドリイシサンゴの種判別のためのマーカー作成において、種ごとに配列が異なる遺伝子領域のみに注目するだけでは、実際のPCRによる増幅が困難になり、種判別マーカーとして確立するのが難しい点が明らかになった。そのため、イントロン配列を含めたマーカーを追加で開発する必要性が浮上し、その解析方法を新たに開発したため。
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今後の研究の推進方策 |
核ゲノムからのミドリイシサンゴの種判別用の新規マーカー候補について、PCR増幅するためのプライマーセットを複数設計できたので、実際の多様なミドリイシサンゴ種のDNAサンプルを使用した有効性の確認を継続する。さらにサンゴの健康状態等が環境DNAに与える影響についても、検証を行う実験体制を構築する。 日本に生息する造礁サンゴのミトコンドリアゲノムのデータベースの構築のため、これまでに採集したサンプルの解析を進め、ミトコンドリアゲノムの再構築を推進する。さらにミトコンドリアゲノムのアノテーションを行う解析手法を確立し、解読したミトコンドリアゲノムと既知のサンゴのミトコンドリアゲノムとの配列比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミドリイシサンゴの種判別のためのマーカーを追加で開発する必要が生じ、そのために新たな解析方法を検討し確立する必要が出たので、計画に遅れが生じた。解析方法は確立できたので、それを用いて研究を推進する。サンゴの健康状態、具体的には呼吸量や光合成活性の変化が環境DNAへ与える影響について、これらを調べるための実験系の構築についても推進する計画である。
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