研究課題/領域番号 |
17K08088
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
青木 博史 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (10440067)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ペスチウイルス / 自然免疫制御 / 内因性干渉 / IFNAR1ノックアウト細胞 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き自然免疫制御能及び遺伝子型が異なる牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の完全長cDNA分子クローンの構築を進め、BVDV-2型のvKZ91NCP-ウイルスの合成に成功した。当該ウイルスは強力な異種ウイルス干渉を示し、元ウイルスと同じ性状を維持した自然免疫誘導型であることを確認した。これにより、BVDV-1自然免疫誘導型(vNo.12/P8Lウイルス)および誘導型(vNo.12-)並びにBVDV-2自然免疫誘導型(vKZ91NCP-)のそれぞれ合成ウイルスを揃えることを達成し、これらウイルスを組み合わせて感染させることによるウイルス間相互反応の解析が可能となった。 自然免疫制御能及び遺伝子型が異なる合成ウイルスを培養細胞に同時感染させた後の、各ウイルスの複製を解析するための遺伝子型識別リアルタイムRT-PCR検出系を構築し、並びに自然免疫反応を解析するためのインターフェロン刺激関連遺伝子(Mx、ISG15及びPKR)のmRNAのリアルタイムPCR検出系を確立した。 前年度に続き牛Ⅰ型インターフェロン受容体サブユニット1(bFNAR1)ノックアウト(KO)細胞の作製を進めた。前年度で課題となった牛腎株化培養細胞へのgRNA/Cas9同時発現プラスミド導入効率を改善に取り組み、プラスミドと導入試薬の至適配合比を発見し、数%であった導入効率を最大12%まで向上した。さらに、フローサイト・セルソーティング系を用いてbIFNAR1-KO候補細胞を効率よく回収した。また、シングルセル・クローニングと変異検出を繰り返し、複数のbIFNAR1-KO候補細胞クローンを確保した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
KZ91NCP-ウイルスゲノム3’末端338塩基を連結し、完全長cDNA分子クローンプラスミドpKZ-を完成させた。制限酵素で線状化したpKZ-からの試験管内合成ウイルスRNAを用いた場合のウイルス合成効率が低かったため、pKZ-を鋳型に長鎖PCR系で得たPCR産物から試験管内ウイルスRNA合成する方法を確立した。合成ウイルスRNA20μgを電気穿孔法で牛精巣(BT)細胞に導入し、合成ウイルスvKZ91NCP-の回収に成功した。vKZ91NCP-感染BT細胞は水胞性口炎ウイルス干渉(異種ウイルス干渉)を示し、自然免疫誘導型ウイルスであることを確認した。 遺伝子型と生物型の異なる合成ウイルスの共感染後のウイルス複製を解析する遺伝子型識別リアルタイムRT-PCR検出系(絶対定量)を確立した。BVDV-1型検出にFAM標識の、BVDV-2型検出にHEX標識のTaqMANプローブを用いて、同一チューブで両ウイルスを同時定量できることを確認した。 合成ウイルス回収に時間を要してウイルス相互反応の解析が未着手なため、やや遅れていると判断した。ただし、合成ウイルス各種が揃い、検出系も構築できたため、ウイルス相互反応の解析に着手できる状況にある。 細胞導入試薬(TransFectin Lipid 試薬,BIO-RAD)とgRNA/Cas9同時発現プラスミドの混合比を変えて試行し、前年度で数%であったプラスミド導入効率を10~12%まで向上した。シングルセル・クローニングは難航したため、フローサイト・セルソーティングを導入し、bIFNAR1-KO候補細胞を効率よく確保できた。ソーティングされた候補細胞について変異検出を行いながらクローニングを実施しているが、変異導入が不安定なためにクローニング未達成と考え、やや遅れていると判断した。ただし、3系統のうち2系統の各々で複数のクローンを確保している。
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今後の研究の推進方策 |
自然免疫制御能及び遺伝子型の異なる合成ウイルス(BVDV-1自然免疫抑制型とBVDV-2自然免疫誘導型)を牛腎細胞に共感染させ、遺伝子型識別リアルタイムRT-PCR検出系及び自然免疫関連遺伝子発現解析などを含む当初研究計画に沿ったウイルス間相互反応の解析を実施する。 また、bIFNAR1-KO細胞の樹立を早期に達成し、自然免疫制御能及び遺伝子型の異なる合成ウイルスを共感染させ、遺伝子型識別リアルタイムRT-PCR検出系及び次世代シーケンサーによる網羅的解析により、自然免疫制御によらないウイルス間相互反応(内因性干渉)と変異型出現などの解析を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
BVDV-2自然免疫誘導型合成ウイルスの回収、及びbIFNAR1-KO候補細胞の選抜とシングルセル・クローニング作業に時間を要したことに伴い、合成ウイルスの遺伝的均一性の解析及び候補細胞の性状解析の進捗に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。これらの作業の継続、並びに合成ウイルス共感染に伴う変異ウイルス検出のために当該助成金を使用する。
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