本研究では細胞中で生成する様々な8位酸化グアノシン誘導体を標的とした、機能性認識分子の開発を目的としている。平成31年度(令和元年度)は平成30年度までに開発した8-nitro-cGMP捕捉分子「NGG」誘導体の最適化と、8-thio-cGMP検出のためのプローブ分子の検討を行った。 まず平成30年度までに報告した、8-nitro-cGMP捕捉分子NGG誘導体は、NGG-H、NGG-oMe及びNGG-pMeの3種類である。捕捉反応性はNGG-oMe>NGG-H=NGG-pMeであったことから、チオール基の配向性制御効果が示唆されていた。そこで令和元年度は、これら誘導体の反応速度論的解析を行った。その結果、NGG-pMeは活性化エントロピー値が優位であることが示され、チオール基の配向性制御が機能していることが支持された。またそれぞれの捕捉生成した化合物についても、各種機器測定により同定された。速度論的解析を基に、トリフルオロメチルを導入した「NGG-pCF3」を合成・評価したが、NGG-Hと同程度の反応性であり、さらなる反応性向上には至らなかった。NGG-Hを利用した予備検討で、HEK293細胞を用いて細胞中に取り込まれた8-nitro-cGMPを捕捉していることが、抗体による評価系で示唆された。現在はNGG誘導体が培養細胞中で機能したことを立証するために、共同研究のかたちで質量分析による評価系を依頼している。 本年度は新たに8-thio-cGMP検出蛍光プローブとして、蛍光消光基を導入した誘導体「TGG-Ns」及び「TGG-dNs」を設計・合成した。これらは8-thio-cGMPと反応することで、蛍光がturn-onとなる設計であった。予備的に有機溶媒中で評価を行ったが、8-thioGとの反応性が低く、より反応性に富んだ官能基導入が必要であることが示唆された。
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